呻吟語 / 外篇・廣喻・冥行疾走
未有冥行疾走於斷崖絕壁之道而不傾跌者。
新字:未有冥行疾走於断崖絶壁之道而不傾跌者。
書き下し
未だ斷崖絕壁の道に冥行疾走して傾跌せざる者有らず。
現代語訳
切り立った崖や絶壁の道を、暗がりで速く走って転ばなかった者はいません。
解説
暗さと速さが重なる危うさを、一句で示します。崖の道という条件に、見えないことと急ぐことが加われば、転ばない者はいません。例外が無いという言い方で必然として語られます。前に出てきた、急ぐ心が消耗を招くという段や、明るさが要るという段が、ここで一つの場面にまとめられた形になっています。見えないことと急ぐことが、重なった場面です。例外が無いという言い方で、必然として語られます。
この章句が説くこと
断崖冥行疾走必然転倒
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・問學・日落ちて城門に趕る日落ちて城門に趕る。一腳遲ければ便ち關ざされたり。何處にか止宿せん。故に學は時に及ぶを貴ぶ。懸崖に孤樹を抱く。一手鬆かなれば便ち脫れたり。何處にか身を落とさん。故に學は力を著くるを貴ぶ。故に老大に傷悲するも、時を追はんと要せば除は是れ再生なり。既に將に得んとするに失ふも、仍前ならんと要せば除は是れ頭より從ふなり。
-
『呻吟語』内篇・談道・從容に得て急遽に失ふ物を覓むる者は、苦だ求めて得ず、或いは之を視れども見えず。他日覓むるに事無きや、乃ち之を得たり。物に趨避有るに非ず、目の急求に眩めばなり。天下の事は、每に從容に得て之を急遽に失ふ。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・直だ衣履を愛するのみ人に未だ簷滴を過ぎて疾走せざる者有らず、泥塗を踐みて足を揭げざる者有らず。此れ直だ衣履を愛するのみ。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・近ごろ險ならずと以為ふは、卻つて是れ險なり某は數しば棧道を過ぐ。初めは敢へて足を移さず。今は平地を履むが如し。余曰く、「君始めは以て險と為す。是れ險ならず。近ごろ險ならずと以為ふは、卻つて是れ險なり」と。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・幾曾か地の倒れたるを見ん只だ牆の倒れたるを見る。幾曾か地の倒れたるを見ん。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・百尺竿頭に步を進む萬層の波面に潮を弄し、百尺の竿頭に步を進む。