呻吟語 / 外篇・治道・斗珠は升糠に如かず
余息而在溝壑,斗珠不如升糠;祼裎而臥冰雪,敗絮重於繡縠。舉世用人,皆珠縠之貴也。有甚高品,有甚清流?不適緩急之用,即真非所急矣。
書き下し
余息して溝壑に在らば、斗珠も升糠に如かず。祼裎して冰雪に臥さば、敗絮も繡縠より重し。舉世の人を用ふるは、皆な珠縠の貴きなり。甚だ高品有り、甚だ清流有らんや。緩急の用に適せずんば、即ち真に急とする所に非ざるなり。
現代語訳
私が息も絶えだえに溝や谷にいれば、一斗の真珠も一升の糠に及びません。裸で氷雪に臥せば、破れた綿入れも刺繍の絹より重い。世を挙げての人の用い方は、みな真珠と絹の貴さです。どれほど高い品位があり、どれほど清らかな流れがあるでしょうか。緩急の用に合わなければ、本当に急を要するものではありません。
解説
価値が状況で反転することを、二つの極端な場面で示します。飢えていれば真珠より糠、凍えていれば絹より破れ綿。そして人材の用い方が、真珠と絹を貴ぶのと同じだとされます。品位も清らかさも、急場で使えなければ意味がありません。前に出てきた、非常時には破れのある人を用いよという段と同じ主張が、比喩で鮮やかに示された一段です。
この章句が説くこと
価値状況反転品位実用
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