呻吟語 / 内篇・問學・善く學ぶ者は躁心無し
冰見烈火,吾知其易易也,然而以熾炭鑠堅冰,必舒徐而後盡;盡為寒水,又必待舒徐而後溫;溫為沸湯,又必待舒徐而後竭。夫學豈有速化之理哉?是故善學者無躁心,有事勿忘從容以俟之而巳。
新字:冰見烈火,吾知其易易也,然而以熾炭鑠堅冰,必舒徐而後尽;尽為寒水,又必待舒徐而後温;温為沸湯,又必待舒徐而後竭。夫学豈有速化之理哉?是故善学者無躁心,有事勿忘従容以俟之而巳。
書き下し
冰烈火を見れば、吾其の易易たるを知る。然れども熾炭を以て堅冰を鑠かすに、必ず舒徐にして而る後に盡く。盡く寒水と為るも、又た必ず舒徐を待ちて而る後に溫かなり。溫かくして沸湯と為るも、又た必ず舒徐を待ちて而る後に竭く。夫れ學豈に速化の理有らんや。是の故に善く學ぶ者は躁心無く、事有りて忘るる勿く、從容として以て之を俟つのみ。
現代語訳
氷が烈火に遭えば、たやすく溶けると誰もが思います。しかし熾った炭で堅い氷を溶かすにも、ゆっくり進んで初めて溶け切ります。すべて冷たい水になっても、またゆっくり待って初めて温かくなります。温かくなって湯が沸いても、またゆっくり待って初めて尽きます。学問にどうして速く変わる理があるでしょうか。だから上手に学ぶ者は焦る心を持たず、事に当たっては忘れず、ゆったりと待つだけです。
解説
氷が湯になるまでを三段に分けて描きます。溶ける、温まる、沸いて尽きる。どの段にも同じだけ時間がかかる。強い火をあてても短縮できないという、実験の観察のような書き方です。そして結論は孟子の、忘れず助長せずという言葉に着地します。焦りを戒める段は多いですが、これは物理の過程で説いた点が独特です。焦りを、物理の過程で戒めた珍しい一段です。
この章句が説くこと
漸進焦り氷待つ過程
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