呻吟語 / 内篇・談道・此の五賊は、道を破り正を亂す
私恩煦感,仁之賊也;直往輕擔,義之賊也;足恭偽態,禮之賊也;苛察岐疑,智之賊也;苟約固守,信之賊也。此五賊者,破道亂正,聖門斥之。後世儒者往往稱之以訓世,無識也與!
新字:私恩煦感,仁之賊也;直往軽担,義之賊也;足恭偽態,礼之賊也;苛察岐疑,智之賊也;苟約固守,信之賊也。此五賊者,破道乱正,聖門斥之。後世儒者往往称之以訓世,無識也与!
書き下し
私恩煦感は、仁の賊なり。直往輕擔は、義の賊なり。足恭偽態は、禮の賊なり。苛察岐疑は、智の賊なり。苟約固守は、信の賊なり。此の五賊なる者は、道を破り正を亂す、聖門之を斥く。後世の儒者は往往にして之を稱して以て世を訓ふ、無識なるかな。
現代語訳
私的な恩でぬくもらせ感じ入らせるのは、仁の賊です。まっしぐらに進んで軽々しく引き受けるのは、義の賊です。行きすぎた恭しさや偽りの態度は、礼の賊です。細かく調べ立てて疑いを枝分かれさせるのは、智の賊です。いい加減な約束を固く守るのは、信の賊です。この五つの賊は、道を破り正を乱すもので、聖人の門はこれを退けました。後世の儒者はしばしばこれを称えて世を教えます。見識のないことです。
解説
五常それぞれに、そっくりな偽物が一つずつ挙げられます。私恩は仁に、軽々しい引き受けは義に、過剰な恭しさは礼に、細かい詮索は智に、いい加減な約束を守ることは信に似ています。どれも褒められがちな振る舞いばかりです。そして後世の儒者がこれを称えて教えている、と批判される。徳とその偽物を見分ける実用的な一覧になっています。
この章句が説くこと
五賊偽物私恩足恭苛察
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