呻吟語 / 外篇・品藻・國家奚ぞ賴らんや
棄此身操執之常而以圓軟沽俗譽,忘國家遠大之患而以寬厚巿私恩,巧趨人所未見之利,善避人所未識之害,立身於百禍不侵之地,事成而我有功,事敗而我無咎,此智巧士也,國家奚賴焉!
新字:棄此身操執之常而以円軟沽俗誉,忘国家遠大之患而以寛厚巿私恩,巧趨人所未見之利,善避人所未識之害,立身於百禍不侵之地,事成而我有功,事敗而我無咎,此智巧士也,国家奚頼焉!
書き下し
此の身操執の常を棄てて圓軟を以て俗譽を沽り、國家遠大の患ひを忘れて寬厚を以て私恩を巿り、巧みに人の未だ見ざる所の利に趨き、善く人の未だ識らざる所の害を避け、身を百禍侵さざるの地に立て、事成れば我に功有り、事敗るれば我に咎無し。此れ智巧の士なり。國家奚ぞ賴らんや。
現代語訳
この身が守り通すべき常を捨てて、丸く軟らかいことで世の評判を買い、国家の遠く大きな患いを忘れて、寛厚さで私的な恩を売り、巧みに人がまだ気づかない利に走り、上手に人がまだ知らない害を避け、身を百の禍が侵せない場所に置き、事が成れば自分に功があり、事が敗れれば自分に咎が無い。これが智恵と技巧の士です。国家は何を頼りにすればよいのでしょうか。
解説
最も巧みな立ち回りを、細かく描写します。評判を買い、恩を売り、利に先回りし、害を先に避け、安全な場所に身を置く。成功すれば功、失敗すれば無傷。完璧な保身です。そして最後に反問が置かれます。こういう人ばかりなら国は何を頼るのか。有能さの最も危うい形を描いた一段です。能力が高いほど危ういという、逆説の構図になっています。
この章句が説くこと
保身立ち回り評判無傷智巧
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