呻吟語 / 外篇・品藻・瞽の星を指し、聾の樂を議す
評品古人,必須胸中有段道理,如權平衡直,然後能稱輕重。若執偏見曲說,昧於時不知其勢,責其病不察其心,未嘗身處其地,未嘗心籌其事,而日某非也,某過也,是瞽指星、聾議樂,大可笑也。君子恥之。
新字:評品古人,必須胸中有段道理,如権平衡直,然後能称軽重。若執偏見曲説,昧於時不知其勢,責其病不察其心,未嘗身処其地,未嘗心籌其事,而日某非也,某過也,是瞽指星、聾議楽,大可笑也。君子恥之。
書き下し
古人を評品するは、必ず須らく胸中に一段の道理有りて、權の平らかに衡の直きが如くにして、然る後に能く輕重を稱るべし。若し偏見曲說を執り、時に昧くして其の勢を知らず、其の病を責めて其の心を察せず、未だ嘗て身其の地に處らず、未だ嘗て心其の事を籌らずして、某は非なり某は過ちなりと曰はば、是れ瞽の星を指し、聾の樂を議するなり。大いに笑ふ可し。君子之を恥づ。
現代語訳
古人を評価するには、必ず胸の中に一つの道理があって、分銅が平らで棹がまっすぐな秤のようであって初めて、軽重を量れます。もし偏った見方を握り、時代に暗くその勢いを知らず、その病を責めてその心を察せず、その立場に身を置いたこともなく、その事を心で計ったこともないのに、あれは間違いだこれは過ちだと言うなら、それは盲人が星を指し、聾者が音楽を論じるのと同じです。実に笑うべきことです。君子はそれを恥じます。
解説
古人を評する条件を並べます。正確な秤、時代の勢いの理解、心の察知、立場への想像、事の計算。どれも欠けたまま断じるのは、盲人が星を指すのと同じだ、と。二つの比喩が痛烈で、見えていないという自覚すら無い状態を言い当てています。歴史評価の作法を示した一段です。歴史評価の作法を、五つの条件で示した一段です。
この章句が説くこと
人物評条件立場想像盲聾
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