呻吟語 / 外篇・治道・簿書十分の九を裁す
簿書所以防奸也,簿書愈多而奸愈黠,何也?千冊萬簿,何官經眼?不過為左右開打點之門,廣刁難之計,為下司增紙筆之孽,為百姓添需索之名。舉世昏迷,了不經意,以為當然,一細思之,可為大笑。有識者裁簿書十分之九而上下相安,弊端自清矣。
新字:簿書所以防奸也,簿書愈多而奸愈黠,何也?千冊万簿,何官経眼?不過為左右開打点之門,広刁難之計,為下司增紙筆之孽,為百姓添需索之名。舉世昏迷,了不経意,以為当然,一細思之,可為大笑。有識者裁簿書十分之九而上下相安,弊端自清矣。
書き下し
簿書は奸を防ぐ所以なり。簿書愈いよ多くして奸愈いよ黠なるは、何ぞや。千冊萬簿、何の官か眼を經ん。左右の為に打點の門を開き、刁難の計を廣むるに過ぎず。下司の為に紙筆の孽を增し、百姓の為に需索の名を添ふ。舉世昏迷し、了に意を經ず、以て當然と為す。一たび細かに之を思へば、大笑を為す可し。識有る者は簿書十分の九を裁して上下相ひ安んじ、弊端自ら清まらん。
現代語訳
帳簿は悪事を防ぐためのものです。帳簿が多くなるほど悪事が狡猾になるのはなぜでしょうか。千冊万冊の帳簿を、どの官が目を通すでしょうか。側仕えのために取り計らいの門を開き、難癖の計を広げるだけです。下役所のために紙と筆の罪を増やし、民のために要求の名目を加えるだけです。世を挙げて迷い、まったく気に留めず、当然のことと考えます。細かに考えれば大笑いすべきことです。見識のある者は帳簿の十分の九を削れば、上下が互いに安んじ、弊害は自ずと清まります。
解説
帳簿が悪事を防ぐどころか、狡猾にする仕組みを説きます。誰も目を通さないので、取り計らいと難癖の材料になるだけです。しかも下役所には紙と筆の負担、民には要求の名目が増えます。そして処方が具体的に示されます。十分の九を削れ。前に出てきた、法が多いほど抜け道が増えるという段と同じ主張が、実行できる数字として出された一段です。
この章句が説くこと
簿書防奸逆効果削減九割
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