呻吟語 / 内篇・修身・聖賢の怒は自ら別なり
淫怒是大惡,裡面御不住氣,外面顧不得人,成甚涵養?或曰:「涵養獨無怒乎?」曰:「聖賢之怒自別。」
新字:淫怒是大悪,裡面御不住気,外面顧不得人,成甚涵養?或曰:「涵養独無怒乎?」曰:「聖賢之怒自別。」
書き下し
淫怒は是れ大惡なり。裡面は氣を御し住めず、外面は人を顧み得ず。甚の涵養をか成さん。或るひと曰く、「涵養には獨り怒無きか」と。曰く、「聖賢の怒は自ら別なり」と。
現代語訳
度を越した怒りは大きな悪です。内では気を抑えきれず、外では人への配慮ができません。これでどんな養いになるでしょうか。ある人が問いました。養いのある人には怒りが無いのですか。答えて言う。聖賢の怒りは、まったく別のものです。
解説
怒りそのものを禁じてはいません。禁じるのは度を越した怒りで、その定義が明快です。内では気が抑えられず、外では人が見えなくなる。この二つが揃った状態を悪と呼びます。そして怒りが無いのかと問われて、聖賢の怒りは別だとだけ答え、説明しません。怒ってよい怒りがあることを認めつつ、その中身は言葉にしない。読む側に判断を預けた、短いながら含みのある答えになっています。
この章句が説くこと
怒り涵養節度感情聖賢
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・談道・過ちは已發の後に在らず發して節に中たらざるは、過ち已發の後に在らず。
-
論語・先進篇顔淵死す。子之を哭して慟す。従者曰く、「子慟せり。」曰く、「慟すること有るか。夫の人の為に慟するに非ずして誰が為にせん。」
-
説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
-
葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
-
葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
-
尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。