呻吟語 / 内篇・養生・忘の一字を體玩す
語云:「縱欲忘身」,忘之一字最宜體玩。昏不省記謂之忘,欲迷而不悟,情勝而不顧也。夜氣清明時,都一一分曉,著迷處,便思不起,沉溺者可以驚心回首矣。
新字:語云:「縦欲忘身」,忘之一字最宜体玩。昏不省記謂之忘,欲迷而不悟,情勝而不顧也。夜気清明時,都一一分暁,著迷処,便思不起,沈溺者可以驚心回首矣。
書き下し
語に云ふ、「慾を縱にして身を忘る」と。忘の一字は最も宜しく體玩すべし。昏くして省記せざるを忘と謂ふ。慾に迷ひて悟らず、情勝ちて顧みざるなり。夜氣清明の時は、都て一一分曉なり。迷ふ處に著けば、便ち思ひ起こさず。沉溺する者は以て心を驚かし首を回らす可し。
現代語訳
言葉に、欲をほしいままにして身を忘れるとあります。この忘という一字はよく味わうべきです。暗くて覚えていられないのを忘と言います。欲に迷って悟らず、情が勝って顧みないのです。夜の気が澄んで明るい時には、何もかも一つ一つはっきりしています。迷いの中に入ってしまえば、もう思い出せません。溺れている者は、はっと心を驚かせて振り返るべきです。
解説
忘という一字を分解します。忘れるとは、知らないのではなく、その瞬間に思い出せないことです。夜の静かな時には全部見えているのに、迷いの中では出てこない。知識の問題ではなく、想起の問題だという分析が鋭い。だから対策は覚え直すことではなく、はっと振り返る瞬間を作ることになります。対策は覚え直すことではなく、振り返る瞬間を作ることです。
この章句が説くこと
忘想起欲夜気振り返り
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