呻吟語 / 外篇・治道・要他何用
而今當民窮財盡之時,動稱礦稅之害。以為事幹君父,諫之不行,總付無可奈何。吾且就吾輩安民節用以自便者言之。飲食入腹,三分銀用之不盡,而食前方丈,總屬暴殄,要他何用?僕隸二人,無三十里不肉食者,不程飯桌,要他何用?轎扛人夫,吏書馬匹,寬然有餘,而鼓吹旌旗,要他何用?下莞上簟,公座圍裙,盡章物采矣,而滿房鋪氈,要他何用?上司新到,須要參謁,而節壽之日,各州懸幣帛下程,充庭盈門,要他何用?前呼後擁,不減百人,巡捕聽事,不缺官吏,而司道府官交界送接,到處追隨,要他何用?隨巡司道,拜揖之外,張筵互款,期會不遑,而帶道文卷盡取抬隨,帶道書吏盡人跟隨,要他何用?官官如此,在在如此,民間節省,一歲盡多,此豈朝廷令之不得不如此邪?吾輩可以深省矣。
新字:而今当民窮財尽之時,動称礦税之害。以為事幹君父,諫之不行,総付無可奈何。吾且就吾輩安民節用以自便者言之。飲食入腹,三分銀用之不尽,而食前方丈,総属暴殄,要他何用?僕隸二人,無三十里不肉食者,不程飯桌,要他何用?轎扛人夫,吏書馬匹,寛然有余,而鼓吹旌旗,要他何用?下莞上簟,公座囲裙,尽章物采矣,而満房鋪氈,要他何用?上司新到,須要参謁,而節寿之日,各州懸幣帛下程,充庭盈門,要他何用?前呼後擁,不減百人,巡捕聴事,不欠官吏,而司道府官交界送接,到処追随,要他何用?随巡司道,拝揖之外,張筵互款,期会不遑,而帯道文巻尽取抬随,帯道書吏尽人跟随,要他何用?官官如此,在在如此,民間節省,一歳尽多,此豈朝廷令之不得不如此邪?吾輩可以深省矣。
書き下し
而今民窮し財盡くるの時に當たり、動もすれば礦稅の害を稱す。以為へらく事君父に幹り、之を諫むるも行はれずんば、總て無可奈何に付すと。吾且く吾輩の民を安んじ用を節して以て自ら便とする者に就きて之を言はん。飲食腹に入るは、三分の銀もて之を用ひて盡きず。而るに食前方丈は、總て暴殄に屬す。他を要して何の用ぞ。僕隸二人、三十里として肉食せざる無き者は、飯桌を程せず、他を要して何の用ぞ。轎扛人夫、吏書馬匹は、寬然として餘り有り。而るに鼓吹旌旗は、他を要して何の用ぞ。下に莞し上に簟し、公座圍裙は、盡く物采を章にせり。而るに滿房に氈を鋪くは、他を要して何の用ぞ。上司新たに到らば、須らく參謁すべし。而るに節壽の日、各州懸の幣帛下程、庭に充ち門に盈つるは、他を要して何の用ぞ。前呼後擁、百人を減ぜず、巡捕聽事、官吏を缺かず。而るに司道府官の交界送接、到る處に追隨するは、他を要して何の用ぞ。隨巡の司道、拜揖の外、筵を張り互ひに款し、期會遑あらず。而るに帶道の文卷盡く取りて抬隨し、帶道の書吏盡く人をして跟隨せしむるは、他を要して何の用ぞ。官官此の如く、在在此の如し。民間の節省、一歲盡く多し。此れ豈に朝廷之を令して此の如くならざるを得ざらんや。吾輩以て深く省みる可し。
現代語訳
今、民が窮まり財が尽きる時に当たって、何かにつけて鉱山税の害を言います。事が君と父に関わり、諫めても行われなければ、すべてどうしようもないことに付すと考えます。私はしばらく、我らが民を安んじ費えを節して自分に都合よくしていることについて言いましょう。飲食が腹に入るのは、三分の銀を使っても使い切れません。それなのに食前に一丈四方の膳を並べるのは、すべて無駄遣いです。何に要るのでしょうか。下男二人が、三十里ごとに肉を食わないことが無く、食事の膳を測らないのは、何に要るのでしょうか。駕籠と担ぎ手と人夫、書記と馬はゆったり余っています。それなのに鼓と笛と旗は何に要るのでしょうか。下に莞を敷き上に簟を敷き、公の座の囲い布は、飾りを尽くしています。それなのに部屋中に氈を敷くのは何に要るのでしょうか。上司が新しく着任すれば参上すべきです。しかし節句や誕生日に各州県の贈り物が庭に満ち門に溢れるのは何に要るのでしょうか。前で呼ばわり後ろで囲むのが百人を下らず、巡回と聴取に官吏が欠けません。それなのに司や道や府の官が境で送り迎えし、行く先々で付き従うのは何に要るのでしょうか。巡回に随う司や道が、挨拶のほかに宴を張って互いにもてなし、会合の暇もありません。それなのに携帯する文書をすべて運ばせ、書記をすべて付き従わせるのは何に要るのでしょうか。官も官もこうであり、どこもかしこもこうです。民間の節約は、一年でたいへんな額になります。これはどうして朝廷が命じてこうせざるを得ないのでしょうか。我らは深く省みるべきです。
解説

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