呻吟語 / 内篇・存心・雅淡なる者は、百祥の本なり
欣喜歡愛處,便藏煩惱機關,乃知雅淡者,百祥之本;怠惰放肆時,都是私欲世界,始信懶散者,萬惡之宗。
新字:欣喜歓愛処,便蔵煩悩機関,乃知雅淡者,百祥之本;怠惰放肆時,都是私欲世界,始信懶散者,万悪之宗。
書き下し
欣喜歡愛の處には、便ち煩惱の機關を藏す。乃ち知る、雅淡なる者は、百祥の本なりと。怠惰放肆の時は、都て是れ私欲の世界なり。始めて信ず、懶散なる者は、萬惡の宗なりと。
現代語訳
喜び楽しみ愛するところには、そのまま煩わしさの仕掛けが隠れています。そこで知ります。淡くあっさりしていることが、百の幸いのもとなのだ、と。怠けてほしいままにしているときは、すべて私欲の世界です。そこではじめて信じます。だらしなく散漫であることが、万の悪のおおもとなのだ、と。
解説
二つの対句で、幸いと悪の根が特定されます。喜びの中に煩いの仕掛けが隠れているから、淡くあっさりしているのが幸いのもと。怠けているときはすべて私欲の世界だから、だらしなさが悪のおおもと。どちらも、悪事ではなく日常の気分の傾きが原因として名指しされているのが特徴です。淡さと締まり、という二つの対策が導かれます。
この章句が説くこと
欣喜煩悩雅淡懶散根源
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・存心・惡を惡むこと太だ嚴なるは、便ち是れ一惡惡を惡むこと太だ嚴なるは、便ち是れ一惡なり。善を樂しむこと甚だ亟なるは、便ち是れ一善なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・禍患は安樂に生ず凡そ禍患は、安樂を以て生じ、憂勤を以て免る。奢肆を以て生じ、謹約を以て免る。觖望を以て生じ、知足を以て免る。多事を以て生じ、慎動を以て免る。
-
『呻吟語』内篇・修身・怠忽惰慢の四字「恭敬謙謹」、此の四字は有心の善なり。「狎侮傲凌」、此の四字は有心の惡なり、人の知り易き所なり。「怠忽惰慢」に至りては、此の四字は乃ち無心の失なるのみ。而るに丹書の戒に、怠の敬に勝つ者は凶とす。蓋し天下の禍患は皆な四字に起こり、一身の罪過は皆な四字に生ず。怠なれば則ち一切苟且、忽なれば則ち一切昏忘、惰なれば則ち一切疏懶、慢なれば則ち一切延遲なり。之を以て事に應ずれば則ち萬事皆な廢し、之を以て人に接すれば則ち眾心皆な離る。
-
『呻吟語』内篇・存心・一念收斂すれば、萬善來たり同ず一念收斂すれば、則ち萬善來たり同ず。一念放恣なれば、則ち百邪釁に乘ず。
-
『呻吟語』内篇・存心・惟だ理義の我が心を悅ばしむるのみ未だ甘心快意にして身に殃ひせざる者有らず。惟だ理義の我が心を悅ばしむるは、卻つて步步是れ安樂の境なり。
-
『呻吟語』内篇・存心・君子は意を得て憂へ、喜に逢ひて懼る殃咎の來たる、未だ心を快くするに始まらざる者有らず。故に君子は意を得て憂へ、喜に逢ひて懼る。