呻吟語 / 外篇・治道・人の為に荊卿と作らず
居生殺予奪之柄,而中奸細之術以陷正人君子,是受顧之刺客也。傷我天道,殃我子孫,而為他人快意,愚亦甚矣。愚嘗戲謂一友人曰:「能辱能榮,能殺能生,不當為人作荊卿。」友人謝曰:「此語可為當路藥石。」
新字:居生殺予奪之柄,而中奸細之術以陥正人君子,是受顧之刺客也。傷我天道,殃我子孫,而為他人快意,愚亦甚矣。愚嘗戯謂一友人曰:「能辱能栄,能殺能生,不当為人作荊卿。」友人謝曰:「此語可為当路薬石。」
書き下し
生殺予奪の柄に居りて、奸細の術に中りて以て正人君子を陷るるは、是れ顧を受くるの刺客なり。我が天道を傷り、我が子孫に殃して、他人の為に意を快くするは、愚も亦た甚だし。愚嘗て戲れに一友人に謂ひて曰く、「能く辱め能く榮し、能く殺し能く生かす。當に人の為に荊卿と作るべからず」と。友人謝して曰く、「此の語は當路の藥石と為す可し」と。
現代語訳
生殺与奪の柄を握りながら、狡い術に乗せられて正しい人や君子を陥れるのは、雇われた刺客です。自分の天の道を損ない、自分の子孫に災いをもたらして、他人の気を晴らしてやるのは、愚かさもはなはだしい。私はかつて戯れに友人に言いました。辱めることも栄えさせることも、殺すことも生かすこともできる。人のために荊軻になってはいけない、と。友人は謝して言いました。この言葉は要路にある人の薬石になります、と。
解説
権力を持つ者が他人の恨みに利用される構図を、雇われた刺客に譬えます。損なうのは自分の天道と子孫で、晴れるのは他人の気です。割に合わないという言い方が効いています。そして荊軻の名が出されます。命を懸けた刺客として名高い人物を、人のために使われる例として引くのが辛辣です。友人がこれを薬石だと認めたことで、実際の戒めとして記録されています。
この章句が説くこと
生殺刺客利用荊軻割に合わない
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