呻吟語 / 外篇・世運・聖人は泰を憂へて否を憂へず
喜殺人是泰,愁殺人也是泰。泰之人昏惰侈肆,泰之事廢墜寬罷,泰之風紛華驕蹇,泰之前如上水之篙,泰之世如高竿之頂,泰之後如下坂之車。故否可以致泰,泰必至於否。故聖人憂泰不憂否。否易振,泰難持。
新字:喜殺人是泰,愁殺人也是泰。泰之人昏惰侈肆,泰之事廃墜寛罷,泰之風紛華驕蹇,泰之前如上水之篙,泰之世如高竿之頂,泰之後如下坂之車。故否可以致泰,泰必至於否。故聖人憂泰不憂否。否易振,泰難持。
書き下し
人を喜殺するは泰なり、人を愁殺するも也た泰なり。泰の人は昏惰侈肆、泰の事は廢墜寬罷、泰の風は紛華驕蹇なり。泰の前は上水の篙の如く、泰の世は高竿の頂の如く、泰の後は下坂の車の如し。故に否は以て泰を致す可く、泰は必ず否に至る。故に聖人は泰を憂へて否を憂へず。否は振ひ易く、泰は持し難し。
現代語訳
人を大いに喜ばせるのが泰であり、人を大いに愁えさせるのも泰です。泰の時の人はぼんやり怠り驕り勝手になり、泰の時の事は廃れ緩み、泰の時の風は華やかで驕り高ぶります。泰の前は流れに逆らう竿のようで、泰の世は高い竿の先端のようで、泰の後は坂を下る車のようです。だから否は泰を招くことができ、泰は必ず否に至ります。だから聖人は泰を憂えて否を憂えません。否は立て直しやすく、泰は保ちにくいのです。
解説
順境の危うさを、三つの比喩で描きます。泰の前は流れに逆らう竿、泰の世は竿の先端、泰の後は坂を下る車。頂点に立った後は下るしかありません。そして結論が置かれます。聖人は順境を憂え、逆境を憂えない。逆境は立て直せるが順境は保てないからです。順境の管理を説いた一段になっています。順境の管理を説いた一段になっています。
この章句が説くこと
泰否順境頂点下降憂い
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