呻吟語 / 内篇・修身・天に依る者は獨知の契有り
廣所依不如擇所依,擇所依不如無所依。無所依者,依天也。依天者,有獨知之契,雖獨立宇宙之內而不謂孤;眾傾之、眾毀之而不為動,此之謂男子。
新字:広所依不如択所依,択所依不如無所依。無所依者,依天也。依天者,有独知之契,雖独立宇宙之内而不謂孤;眾傾之、眾毀之而不為動,此之謂男子。
書き下し
依る所を廣くするは依る所を擇ぶに如かず、依る所を擇ぶは依る所無きに如かず。依る所無き者は、天に依るなり。天に依る者は、獨知の契有り。獨り宇宙の内に立つと雖も孤と謂はず。眾之を傾け眾之を毀るも動と為さず。此れを之れ男子と謂ふ。
現代語訳
寄る辺を広く持つよりは、寄る辺を選ぶほうがよい。寄る辺を選ぶよりは、寄る辺を持たないほうがよい。寄る辺を持たない者は、天に寄っています。天に寄る者には、自分だけが知る誓いがあります。宇宙のうちに独り立っていても、孤独とは言いません。大勢が倒そうとし、大勢がけなしても動じません。これを男子と言います。
解説
人脈を広げる、良い相手を選ぶ、誰にも寄らない。この三段で後ろほど良いとします。そして誰にも寄らない者は天に寄っているのだと言い換えます。ここが大事で、支えが無いのではなく、支えが見えないところにあるのです。だから独りでも孤独ではなく、大勢に非難されても動かない。前に出てきた、我は只だ我なりという答えの、裏づけにあたる一段です。
この章句が説くこと
独立寄る辺天孤独自立
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・問學・希天・達天・合天・為天希天の學有り、達天の學有り、合天の學有り、為天の學有り。
-
『呻吟語』内篇・修身・天と人と我吉凶禍福は是れ天の主張、毀譽予奪は是れ人の主張、立身行己は是れ我の主張なり。此の三つの者は、相奪はざるなり。
-
『墨子』尚同中夫れ既に天子に尚同するも、未だ天に尚同せざる者は、則ち天菑、將に猶お未だ止まざらんとするなり。故に若し天、寒熱を降すこと節ならず、霜雪雨露、時ならず、五榖熟せず六畜遂げず、疾菑戾疫、飄風苦雨、荐臻して至る者は、此れ天の罰を降すなり。將に以て下人の天に尚同せざるを罰せんとするなり。
-
『後世への最大遺物』第二回・一俵の米は百万の価値があったこうして初めて一俵の米を取った。その人の自伝によりますれば、「米を一俵取ったときの私の喜びは何ともいえなかった。これ天が初めて私に直接に授けたものにして、その一俵は私にとっては百万の価値があった」というてある。それからその方法をだんだん続けまして、二十歳のときに伯父さんの家を辞した。そのときには三、四俵の米を持っておった。それから仕上げた人であります。それでこの人の生涯を初めから終りまで見ますと、「この宇宙というものは実に、天の造ってくださったもので、天というものは実に恩恵の深いもので、人間を助けよう助けようとばかり思っている。それだから、もしわれわれがこの身を天と地とに委ねて天の法則に従っていったならば、われわれは欲せずといえども天がわれわれを助けてくれる」という、こういう考えであります。
-
『墨子』尚同上天下の百姓、皆な天に上同するも、一にして天に上同せざれば、則ち菑、猶お未だ去らざるなり。今、若し天、飄風苦雨、湊湊として至る者は、此れ天の百姓の天に上同せざるを罰する所以の者なり。
-
『呻吟語』外篇・天地・故に太清と曰ふ天は積氣の成す所、吾が身より以上は皆な天なり。日月星辰は地を去ること八萬四千里、積氣の中に囿はる。纖隔微礙無く、地を徹して光明なる者は、天氣清きこと甚だしく分毫の渣滓無ければなり。故に太清と曰ふ。然らずんば、薄霧輕煙と雖も、一里の外に見えざるの物有らん。