呻吟語 / 内篇・修身・佞風諛俗
足恭過厚,多文密節,皆名教之罪人也。聖人之道自有中正。彼鄉愿者,徼名懼譏,希進求榮,辱身降志,皆所不恤,遂成舉世通套。雖直道清節之君子,稍無砥柱之力,不免逐波隨流,其砥柱者旋以得罪。嗟夫!佞風諛俗不有持衡當路者一極力挽回之,世道何時復古耶?
新字:足恭過厚,多文密節,皆名教之罪人也。聖人之道自有中正。彼鄉愿者,徼名懼譏,希進求栄,辱身降志,皆所不恤,遂成舉世通套。雖直道清節之君子,稍無砥柱之力,不免逐波随流,其砥柱者旋以得罪。嗟夫!佞風諛俗不有持衡当路者一極力挽回之,世道何時復古耶?
書き下し
足恭過厚、多文密節は、皆な名教の罪人なり。聖人の道は自ら中正有り。彼の鄉愿なる者は、名を徼め譏りを懼れ、進を希ひ榮を求め、身を辱め志を降すも、皆な恤へざる所なり。遂に舉世の通套と成る。直道清節の君子と雖も、稍しく砥柱の力無ければ、波を逐ひ流に隨ふを免れず。其の砥柱なる者は旋ち以て罪を得。嗟夫、佞風諛俗、衡を持し路に當たる者の一たび力を極めて之を挽回する有らずんば、世道何れの時か古に復らんや。
現代語訳
へつらうほど恭しく、厚すぎる情け、飾りの多い文と細かすぎる作法は、みな名と教えの罪人です。聖人の道にはおのずと中正があります。あの村里の善人面をした者たちは、名を求め譏りを恐れ、出世を願い栄誉を求め、身を辱め志を下げても意に介しません。そしてそれが世の中の通り相場になってしまいました。まっすぐな道と清い節を守る君子でさえ、少しでも流れの中の柱となる力が無ければ、波に従い流れに従うことを免れません。その柱となった者はたちまち罪を得ます。ああ、へつらいの風と追従の俗を、秤を持ち道に立つ者が力の限り引き戻さなければ、世の道はいつ昔に返るのでしょうか。
解説
やりすぎた丁重さや細かすぎる作法を、美徳ではなく罪だと断じます。行きすぎた恭しさはへつらいだからです。そして郷原、つまり世間受けする善人面を批判し、それが通り相場になった状況を嘆きます。厄介なのは、流れに逆らう者がすぐ罪を得るという指摘で、正しさが罰せられる場では個人の力では持ちません。だから秤を持つ立場の者が引き戻せと訴えて終わります。
この章句が説くこと
郷原追従過剰風俗中正
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