呻吟語 / 内篇・應務・達權と長慮
將事而能弭,當事而能救,既事而能挽,此之謂達權,此之謂才;未事而知其來,始事而要其終,定事而知其變,此之謂長慮,此之謂識。
新字:将事而能弭,当事而能救,既事而能挽,此之謂達権,此之謂才;未事而知其来,始事而要其終,定事而知其変,此之謂長慮,此之謂識。
書き下し
將に事あらんとして能く弭め、事に當たりて能く救ひ、既に事ありて能く挽く、此れを之れ達權と謂ひ、此れを之れ才と謂ふ。未だ事あらざるに其の來たるを知り、事を始めて其の終はりを要し、事定まりて其の變を知る、此れを之れ長慮と謂ひ、此れを之れ識と謂ふ。
現代語訳
事が起きようとするところで止められ、事に当たって救え、事が済んだ後に引き戻せる。これを権に達すると言い、才と言います。まだ事が無いうちに来ることを知り、事を始める時に終わりを見定め、事が定まってからその変化を知る。これを長い思慮と言い、識と言います。
解説
才と識を、それぞれ三つの場面で定義します。才は止める、救う、引き戻すという処置の力。識は予見する、終わりを見定める、変化を読むという見通しの力。どちらも三段で示されるので、自分がどちらに強いか測れます。処置だけできても見通しが無ければ後手に回るという含みもあり、二つを揃えよという構成になっています。
この章句が説くこと
才識達権長慮予見
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『呻吟語』内篇・應務・深沉なる者の懼るる所天下後世の事を謀るは最も草草たる可からず。當に深く思ひ遠く慮るべし。眾人の識は、天下の同じき所なり、淺昧にして目前に狃る。其の次は眾人の看得ること一半なる者、其の次は豪傑の士と練達の人の其の大概を得たる者、其の次は精識の人の曠世獨得の見有る者、其の次は經綸措置して當時聲色を動かさず、後世變易する能はざる者なり。此に至れば則ち精なり盡くせり、以て復た加ふる無し。此れを之れ大智と謂ひ、此れを之れ真才と謂ふ。若し偶たま得たるの見、聽くを借りたるの言もて、翹能して自ら喜び、臂を攘げて天下の事を直言するは、老成なる者の哀しむ所にして、深沉なる者の懼るる所なり。
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『呻吟語』外篇・品藻・此れ真才なり體解け神昏く、志消え氣沮むは、天下の事是般の人の幹す底に非ず。臂を接し掌を抵ち、志を矢ひ心を奮ふも、天下の事也た是般の人の幹す底に非ず。天下の事を干す者は、智深く勇沉み、神閒に氣定まる。言はざる所有り、言へば必ず當たる。為さざる所有り、為せば必ず成る。自ら好みて才を露はさず、輕々しく試みて功を倖はず。此れ真才なり。世に之を識ること鮮し。
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