呻吟語 / 内篇・修身・己に違ふは難し
人不難於違眾,而難於違己。能違己矣,違眾何難?
書き下し
人は眾に違ふに難からずして、己に違ふに難し。能く己に違はば、眾に違ふこと何ぞ難からん。
現代語訳
人は大勢に逆らうことは難しくなく、自分に逆らうことが難しいのです。自分に逆らえるなら、大勢に逆らうことなど何の難しさがあるでしょうか。
解説
世間に逆らう勇気より、自分の考えに逆らう勇気のほうが難しいと言います。確かに、周囲と衝突する人は珍しくありませんが、自分の意見を自分で覆せる人は稀です。そして順序が示されていて、自分に逆らえる人には、大勢に逆らうことは自然にできる。孤高を目指すのではなく、まず自分を疑えという順番になっているところが要です。
この章句が説くこと
自己反省勇気同調翻意
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・腳を放ちて行けば日日長進を見る頭を回らせて看れば、年年過差有り。腳を放ちて行けば、日日長進を見る。
-
孟子・離婁章句上孟子曰く、「人を愛して親しまずんば、其の仁に反れ。人を治めて治まらずんば、其の智に反れ。人を禮して答えずんば、其の敬に反れ。行いて得ざる者有れば、皆諸を己に反求す。其の身正しければ天下之に歸す。詩に云う、『永く言、命を配し、自ら多福を求む。』」
-
司馬法・天子之義大敗には誅(ちゅう)せず、上下皆不善は己に在りと以(おも)う。
-
孫子・九地篇吾が士に余財無きは、貨を悪むに非ざるなり。余命無きは、寿を悪むに非ざるなり。令の発するの日、士卒の坐する者は涕襟を沾し、偃臥する者は涙頤に交わる。之を往く所無きに投ずれば、則ち諸・劌の勇なり。
-
説苑・立節士君子の勇有りて行に果なる者、以て節を立て誼を行わずして、妄死非名を以てするは、豈に痛ましからずや。士殺身以て仁を成し、害に触れて以て義を立て、節理に倚りて死地を議せざる有り。故に能く身死して名来世に流る、勇断有るに非ずんば、孰か能く之を行わんや。
-
論語・述而篇子、顔淵に謂いて曰く、「之を用うれば則ち行い、之を舎つれば則ち蔵る。惟だ我と爾と是れ有るかな。」子路曰く、「子、三軍を行らば、則ち誰と与にせん。」子曰く、「暴虎馮河、死して悔い無き者は、吾与にせざるなり。必ずや事に臨みて懼れ、謀を好みて成す者なり。」