呻吟語 / 外篇・治道・暖衣・飽食・安居・利用
世人作無益事常十九,論有益惟有暖衣、飽食、安居、利用四者而已。臣子事君親,婦事夫,弟事兄,老慈幼,上惠下,不出乎此。《豳風》一章,萬世生人之大法,看他舉動,種種皆有益事。
新字:世人作無益事常十九,論有益惟有暖衣、飽食、安居、利用四者而已。臣子事君親,婦事夫,弟事兄,老慈幼,上恵下,不出乎此。《豳風》一章,万世生人之大法,看他舉動,種種皆有益事。
書き下し
世人の無益の事を作すは常に十に九なり。有益を論ずるは惟だ暖衣・飽食・安居・利用の四者有るのみ。臣子の君親に事へ、婦の夫に事へ、弟の兄に事へ、老の幼を慈しみ、上の下に惠むも、此れを出でず。『豳風』の一章は、萬世生人の大法なり。他の舉動を看るに、種種皆な有益の事なり。
現代語訳
世の人が無益な事をするのは、いつも十のうち九です。有益と言えるのは、ただ暖かく着ること、腹一杯食べること、安らかに住むこと、道具を役立てることの四つだけです。臣子が君と親に仕え、妻が夫に仕え、弟が兄に仕え、老が幼を慈しみ、上が下に恵むのも、これを出ません。詩経の豳風の一章は、万世の人の大法です。その一つ一つの振る舞いを見れば、どれも有益な事ばかりです。
解説
有益なことを四つに限定します。暖かく着る、腹一杯食べる、安らかに住む、道具を役立てる。そして人間関係の務めも、結局この四つに帰すとされます。仕えることも慈しむことも、相手をこの四つに届かせることだからです。そして豳風の農事の詩が、万世の大法だとされます。暮らしの実務を、そのまま道徳の内容として置いた一段になっています。
この章句が説くこと
有益四つ暮らし豳風務め
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