呻吟語 / 内篇・修身・再び一步を思へば更に好し
事到放得心下,還慎一慎何妨?言於來向口邊,再思一步更好。
新字:事到放得心下,還慎一慎何妨?言於来向口辺,再思一歩更好。
書き下し
事の心下に放ち得るに到るも、還た一たび慎むも何ぞ妨げん。言の來たりて口邊に向かふも、再び一步を思へば更に好し。
現代語訳
事がもう心から下ろせるところまで来ても、もう一度慎んで何の差し支えがあるでしょうか。言葉が口元まで来ていても、もう一歩考えればさらによいのです。
解説
事も言葉も、もう大丈夫と思った所からもう一手を足せと言います。念には念をという教えですが、対象が済んだ事と出かかった言葉であるところが具体的です。とくに後半、口元まで来た言葉をもう一歩考える。この一歩が入るかどうかで、失言の大半は防げます。実行しやすい形で示された一段です。この一歩が入るかどうかで、失言の大半は防げます。
この章句が説くこと
慎重一手失言念入り余裕
関連する章句
-
『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
-
論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。
-
論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
-
孫子・火攻篇故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。
-
老子・第15章古の善く士たる者は、微妙玄通、深くして識るべからず。夫れ唯だ識るべからず、故に強いて之が容を為す。豫として冬に川を渉るが若く、猶として四隣を畏るるが若く、儼としてそれ客の若く、渙として氷の将に釈けんとするが若く、敦としてそれ樸の若く、曠としてそれ谷の若く、混としてそれ濁れるが若し。孰か能く濁りて以て之を静かにして徐ろに清まさん。孰か能く安んじて以て久しく之を動かして徐ろに生ぜん。此の道を保つ者は盈つるを欲せず。夫れ唯だ盈たず、故に能く蔽れて新たに成る。
-
尚書・蔡仲之命小民を康濟するに、率ね中よりし、聰明を作して舊章を亂すこと無かれ。