呻吟語 / 内篇・修身・榻銘
山西臬司書齋,余新置一榻銘於其上左曰:「爾酣餘夢,得無有宵征露宿者乎?爾灸重衾,得無有抱肩裂膚者乎?古之人臥八埏於襁褓,置萬姓於衽席,而後突然得一夕之安。嗚呼!古之人亦人也夫?古之民亦民也夫?」右曰:「獨室不觸欲,君子所以養精;獨處不交言,君子所以養氣;獨魂不著礙,君子所以養神;獨寢不愧衾,君子所以養德。」
新字:山西臬司書斎,余新置一榻銘於其上左曰:「爾酣余夢,得無有宵征露宿者乎?爾灸重衾,得無有抱肩裂膚者乎?古之人臥八埏於襁褓,置万姓於衽席,而後突然得一夕之安。嗚呼!古之人亦人也夫?古之民亦民也夫?」右曰:「独室不触欲,君子所以養精;独処不交言,君子所以養気;独魂不著礙,君子所以養神;独寝不愧衾,君子所以養徳。」
書き下し
山西臬司の書齋、余新たに一榻を置き銘を其の上に左にして曰く、「爾夢に酣なるも、宵征露宿する者有る無きを得んや。爾重衾に灸るも、肩を抱き膚を裂く者有る無きを得んや。古の人は八埏を襁褓に臥せ、萬姓を衽席に置き、而る後に突然として一夕の安きを得たり。嗚呼、古の人も亦た人なるかな。古の民も亦た民なるかな」と。右にして曰く、「獨室に欲に觸れざるは、君子の精を養ふ所以なり。獨處に言を交へざるは、君子の氣を養ふ所以なり。獨魂に礙に著かざるは、君子の神を養ふ所以なり。獨寢に衾に愧ぢざるは、君子の德を養ふ所以なり」と。
現代語訳
山西の按察司の書斎に、私は新しく寝台を置き、銘を刻みました。左に言う。あなたが夢に酔っているとき、夜道を行き露に寝ている者がいないと言えますか。あなたが重ねた掛け布団で暖まっているとき、肩を抱き肌を裂かれている者がいないと言えますか。昔の人は天下の果てまでをおくるみに寝かせ、万民を寝床に置いて、それでようやく一夜の安らぎを得ました。ああ、昔の人も人でした。昔の民も民でした。右に言う。独りの部屋で欲に触れないのは、君子が精を養う手立てです。独りでいて言葉を交わさないのは、気を養う手立てです。独りの魂が引っかかりに触れないのは、神を養う手立てです。独り寝て布団に恥じないのは、徳を養う手立てです。
解説

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