呻吟語 / 内篇・修身・甕の容有りて勺の懼を懷く
福莫美於安常,禍莫危於盛滿。天地間萬物萬事未有盛滿而不衰者也。而盛滿各有分量,惟智者能知之。是故卮以一勺為盛滿,甕以數石為盛滿;有甕之容而懷勺之懼,則慶有餘矣。
新字:福莫美於安常,禍莫危於盛満。天地間万物万事未有盛満而不衰者也。而盛満各有分量,惟智者能知之。是故卮以一勺為盛満,甕以数石為盛満;有甕之容而懐勺之懼,則慶有余矣。
書き下し
福は常に安んずるより美なるは莫く、禍は盛滿より危ふきは莫し。天地の間の萬物萬事、未だ盛滿にして衰へざる者有らざるなり。而して盛滿は各おの分量有り、惟だ智者のみ能く之を知る。是の故に卮は一勺を以て盛滿と為し、甕は數石を以て盛滿と為す。甕の容有りて勺の懼を懷けば、則ち慶餘り有らん。
現代語訳
福は常のままに安んじることより美しいものはなく、禍は満ち足りることより危ういものはありません。天地のあいだの万物万事で、満ち足りて衰えなかったものはありません。しかも満ちる量はそれぞれ違い、智恵ある者だけがそれを知ります。杯は一勺で満ちますが、甕は数石でようやく満ちます。甕ほどの容量がありながら杯ほどの恐れを抱いていれば、喜びは余りあるでしょう。
解説
満ちれば衰えるという理を認めたうえで、満ちる量は器ごとに違うと言います。杯の満ちる量と甕の満ちる量は同じではない。そして最後の一句が見事で、甕の器量を持ちながら杯の恐れを抱けと言います。大きな器を持つ者ほど小さく恐れる。器量と警戒を逆向きに組み合わせた、忘れがたい結びです。器量と警戒を逆向きに組み合わせた、忘れがたい結びです。
この章句が説くこと
盛満器恐れ衰え分量
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