呻吟語 / 内篇・問學・一毫も掩護し得ず
心得之學,難與口耳者道;口耳之學,到心得者前,如權度之於輕重短長,一毫掩護不得。
新字:心得之学,難与口耳者道;口耳之学,到心得者前,如権度之於軽重短長,一毫掩護不得。
書き下し
心得の學は、口耳の者と道ひ難し。口耳の學は、心得者の前に到れば、權度の輕重短長に於けるが如く、一毫も掩護し得ず。
現代語訳
心で得た学は、耳と口だけの者には語りにくいものです。耳と口だけの学は、心で得た者の前に来れば、秤と物差しが軽重と長短を測るように、毛ほども覆い隠せません。
解説
二種の学の関係を、非対称に描きます。心で得た者は口耳の者に語りにくいが、口耳の者は心で得た者の前では隠せない。分かる側からは見え、分からない側からは見えないという構図です。秤と物差しの比喩が効いていて、判定が主観ではなく計測として行われることを示しています。判定が主観ではなく、計測として行われることを示しています。分かる側からは見え、分からない側からは見えないのです。
この章句が説くこと
心得口耳判定非対称計測
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・微言は世人の耳に入らず纖芥は眾人も能く見る。纖芥を百里の外に置けば、驪龍に非ざれば見る能はず。疑似は賢人能く辨ず。義を精しくして神に入るに至れば、聖人に非ざれば辨ずるを解せず。夫れ聖人の辨を以て賢人に語るも、且つ其の感を滋す。況んや眾人をや。是の故に微言は世人の耳に入らず。
-
『呻吟語』内篇・問學・兩心一個のみ默契の妙は、六經千聖を越過して、直ちに天地と談ず。又た天と一語を交ふるを須ひず。只だ對越仰觀すれば、兩心一個のみ。
-
『呻吟語』内篇・問學・入耳出口の學上に吐き下に瀉すの疾は、日に飲食を進むと雖も、憔悴に補ふ無し。耳に入り口に出づるの學は、日に講究を事とすと雖も、身心に益無し。
-
『呻吟語』内篇・問學・誠の掩ふ可からざること此の如し裡面五分ならば、外面只だ五分を發し得、一釐も多く得ず。裡面十分ならば、外面自ら十分を發し得、一釐も少なく得ず。誠の掩ふ可からざること此の如し。夫れ故に誠ならざれば物無しと曰ふ。
-
『呻吟語』内篇・問學・噴葉の學問、洗面の工夫心上より做し出でざるは、此れは是れ噴葉の學問なり。獨中に慎超せざるは、此れは是れ洗面の工夫なり。甚の事をか成し得ん。
-
『呻吟語』内篇・應務・應ずる者は審らかなるを貴ぶ由衷の言有り、由口の言有り。根心の色有り、浮面の色有り。各おの同じからざるなり。之に應ずる者は審らかなるを貴ぶ。