呻吟語 / 外篇・人情・君自ら炎涼なり
一巨卿還家,門戶不如做官時,悄然不樂曰:「世態炎涼如是,人何以堪?」余曰:「君自炎涼,非獨世態之過也。平常淡素是我本來事,熱鬧紛華是我倘來事。君留戀富貴以為當然,厭惡貧賤以為遭際,何炎涼如之,而暇歎世情哉?」
新字:一巨卿還家,門戸不如做官時,悄然不楽曰:「世態炎涼如是,人何以堪?」余曰:「君自炎涼,非独世態之過也。平常淡素是我本来事,熱鬧紛華是我倘来事。君留恋富貴以為当然,厭悪貧賤以為遭際,何炎涼如之,而暇嘆世情哉?」
書き下し
一巨卿家に還るに、門戶官を做す時に如かず。悄然として樂しまずして曰く、「世態の炎涼是の如し。人何を以て堪へん」と。余曰く、「君自ら炎涼なり、獨り世態の過ちのみに非ざるなり。平常淡素は是れ我が本來の事、熱鬧紛華は是れ我が倘來の事なり。君は富貴に留戀して以て當然と為し、貧賤を厭惡して以て遭際と為す。何ぞ炎涼之に如かん。而して世情を歎ずるに暇あらんや」と。
現代語訳
ある大官が家に帰ると、門構えが官職にあった時に及びません。しょんぼりして楽しまず言いました。世の態度の熱さ冷たさはこの通りだ。人はどうして堪えられようか。私は言いました。あなた自身が熱く冷たいのであって、世の態度だけの過ちではありません。平常の淡く素朴なことが私の本来の事で、賑やかで華やかなことはたまたま来た事です。あなたは富貴に未練を残して当然と考え、貧賤を厭って不運と考えています。これほどの熱さ冷たさがあるでしょうか。世の情を嘆く暇があるでしょうか。
解説
世の冷たさを嘆く大官に、矛先を返します。熱く冷たいのはあなた自身だ、と。根拠が示され、淡く素朴なのが本来で、賑やかなのはたまたま来たものだとされます。順序を逆にしているから落差を感じるわけです。富貴を当然とし貧賤を不運とする、その扱いの差こそが熱さ冷たさだという指摘になっています。扱いの差こそが、熱さ冷たさだという指摘です。
この章句が説くこと
炎涼本来たまたま順序矛先
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