呻吟語 / 内篇・存心・惟だ君子のみ善く火に處る
心平氣和,此四字非涵養不能做,工夫只在個定火。火定則百物兼照,萬事得理。水明而火昏,靜屬水,動屬火,故病人火動則躁擾狂越,及其蘇定,渾不能記。蘇定者,水澄清而火熄也。故人非火不生,非火不死;事非火不濟,非火不敗。惟君子善處火,故身安而德滋。
新字:心平気和,此四字非涵養不能做,工夫只在個定火。火定則百物兼照,万事得理。水明而火昏,静属水,動属火,故病人火動則躁擾狂越,及其蘇定,渾不能記。蘇定者,水澄清而火熄也。故人非火不生,非火不死;事非火不済,非火不敗。惟君子善処火,故身安而徳滋。
書き下し
心平氣和、此の四字は涵養に非ざれば做し能はず。工夫は只だ個の火を定むるに在り。火定まれば則ち百物兼ねて照らし、萬事理を得。水は明にして火は昏し。靜は水に屬し、動は火に屬す。故に病人火動けば則ち躁擾狂越し、其の蘇り定まるに及びて、渾て記す能はず。蘇り定まるとは、水澄清にして火熄むなり。故に人は火に非ざれば生ぜず、火に非ざれば死せず。事は火に非ざれば濟らず、火に非ざれば敗れず。惟だ君子のみ善く火に處る、故に身安くして德滋る。
現代語訳
心平らかに気和やか、という四字は、養い育てるのでなければ作れません。工夫はただ火を鎮めることにあります。火が鎮まればあらゆる物をあわせて照らし、万事が道理にかないます。水は明るく、火は暗い。静は水に属し、動は火に属します。ですから病人は火が動けば暴れ狂い、正気に戻って落ち着いたときには、まったく覚えていません。正気に戻るとは、水が澄んで火が消えることです。ですから人は火がなければ生まれず、火がなければ死にません。事は火がなければ成らず、火がなければ敗れません。ただ君子だけが火をうまく扱うので、身が安らかで徳が増します。
解説
心の平静が、火を鎮めるという一点に絞られます。面白いのは火が悪者にされていないところで、人は火がなければ生まれず死にもせず、事は火がなければ成らず敗れもしない、と両面が並べられます。生きる力と滅ぼす力が同じものだという見方です。だから消すのではなく、うまく扱うことが課題になる。熱意の扱いに悩む人に、そのまま当てはまる整理です。
この章句が説くこと
心平火両面制御涵養
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