呻吟語 / 内篇・修身・分外に好き底は無し
世上沒個分外好底,便到天地位,萬物育底功用,也是性分中應盡底事業。今人才有一善,便向人有矜色,便見得世上人都有不是,余甚恥之。若說分外好,這又是賢智之過,便不是好。
新字:世上没個分外好底,便到天地位,万物育底功用,也是性分中応尽底事業。今人才有一善,便向人有矜色,便見得世上人都有不是,余甚恥之。若説分外好,這又是賢智之過,便不是好。
書き下し
世上に個の分外に好き底無し。便ち天地位し萬物育するの功用に到るも、也た是れ性分の中に應に盡くすべき底の事業なり。今人才かに一善有れば、便ち人に向かひて矜色有り、便ち世上の人都て不是有るを見得たりと。余甚だ之を恥づ。若し分外に好しと說はば、這は又た是れ賢智の過なり、便ち是れ好からず。
現代語訳
世の中に、分を越えて善いというものはありません。天地が位を得て万物が育つという働きにまで至っても、それは自分の性分の中で尽くすべき仕事です。今の人は少し善い事をすると、すぐ人に向かって得意な顔をし、世の中の人はみな間違っていると見なします。私はこれを恥ずかしく思います。もし分を越えて善いと言うなら、それは賢すぎ知りすぎの行きすぎであって、もう善くありません。
解説
どんな立派な行いも、自分の分の内側で当然のことだと言い切ります。だから誇る余地がありません。少し善いことをした人がすぐ他人を見下すという観察が具体的で、善行が傲慢の入口になる様子を突いています。分を越えて善いという考え方そのものが行きすぎだという結びも鋭く、善に上限を設けることで、善意の暴走を止める仕掛けになっています。
この章句が説くこと
分善行傲慢当然修身
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