呻吟語 / 外篇・廣喻・這の藩籬を打破す
我之子我憐之,鄰人之子鄰人憐之,非我非鄰人之子,而轉相鬻育,則不死為恩矣。是故公衙不如私。舍之堅,驛馬不如家騎之肥,不以我有視之也。苟擴其無我之心,則垂永逸者不憚。今日之一勞,惟民財與力之可惜耳,奚必我居也?懷一體者,當使芻牧之常足,惟造物生命之可憫耳,奚必我乘也?嗚呼!天下之有我久矣,不獨此一二事也。學者須要打破這藩籬,才成大世界。
新字:我之子我憐之,鄰人之子鄰人憐之,非我非鄰人之子,而転相鬻育,則不死為恩矣。是故公衙不如私。舎之堅,駅馬不如家騎之肥,不以我有視之也。苟擴其無我之心,則垂永逸者不憚。今日之一労,惟民財与力之可惜耳,奚必我居也?懐一体者,当使芻牧之常足,惟造物生命之可憫耳,奚必我乗也?嗚呼!天下之有我久矣,不独此一二事也。学者須要打破這藩籬,才成大世界。
書き下し
我の子は我之を憐れみ、鄰人の子は鄰人之を憐れむ。我に非ず鄰人に非ざるの子にして、轉た相ひ鬻育せば、則ち死せざるを恩と為す。是の故に公衙は私の舍の堅きに如かず、驛馬は家騎の肥ゆるに如かず。我有を以て之を視ざればなり。苟しくも其の無我の心を擴めば、則ち永逸を垂るる者は憚らず。今日の一勞は、惟だ民の財と力との惜しむ可きのみ。奚ぞ必ずしも我が居ならんや。一體を懷く者は、當に芻牧の常に足るを使むべし。惟だ造物の生命の憫れむ可きのみ。奚ぞ必ずしも我が乘ならんや。嗚呼、天下の我有ること久し。獨り此の一二事のみならざるなり。學者は須らく這の藩籬を打破すべし。才めて大世界と成らん。
現代語訳
自分の子は自分が憐れみ、隣人の子は隣人が憐れみます。自分のでも隣人のでもない子が、売り買いされて育てられれば、死なないだけで恩になります。だから役所の建物は私宅ほど堅くなく、駅の馬は自宅の馬ほど肥えていません。自分の物として見ないからです。もし我の無い心を広げれば、永く安らぐようにする者はためらいません。今日の一度の労は、ただ民の財と力が惜しいだけです。どうして自分の住まいである必要があるでしょうか。一体だと思う者は、飼葉が常に足りるようにすべきです。ただ造物の生命が憐れなだけです。どうして自分の乗り物である必要があるでしょうか。ああ、天下に我があって久しい。この一つ二つの事だけではありません。学ぶ者はこの垣根を打ち破るべきです。それでこそ大きな世界になります。
解説
この章句が説くこと
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