呻吟語 / 内篇・性命・兩間に物我無く、萬古一呼吸
滿方寸渾成一個德性,無分毫私欲便是一心之仁;六尺渾成一個沖和,無分毫病痛便是一身之仁;滿六合渾成一個身軀,無分毫間隔便是合天下以成其仁。仁是全體,無毫髮欠缺;仁是純體,無纖芥瑕疪;仁是天成,無些子造作。眾人分一心為胡越,聖人會天下以成其身。愚嘗謂:「兩間無物我,萬古一呼吸。」
新字:満方寸渾成一個徳性,無分毫私欲便是一心之仁;六尺渾成一個沖和,無分毫病痛便是一身之仁;満六合渾成一個身軀,無分毫間隔便是合天下以成其仁。仁是全体,無毫髪欠欠;仁是純体,無繊芥瑕疪;仁是天成,無些子造作。眾人分一心為胡越,聖人会天下以成其身。愚嘗謂:「両間無物我,万古一呼吸。」
書き下し
方寸に滿ちて渾成する一個の德性、分毫の私欲無きは便ち是れ一心の仁。六尺に渾成する一個の沖和、分毫の病痛無きは便ち是れ一身の仁。六合に滿ちて渾成する一個の身軀、分毫の間隔無きは便ち是れ天下を合はせて以て其の仁を成す。仁は是れ全體、毫髮の欠缺無し。仁は是れ純體、纖芥の瑕疪無し。仁は是れ天成、些子の造作無し。眾人は一心を分かちて胡越と為し、聖人は天下を會して以て其の身を成す。愚嘗て謂ふ、「兩間に物我無く、萬古一呼吸」と。
現代語訳
胸いっぱいに満ちて渾然と成った一つの徳性に、わずかの私欲もないのが一心の仁です。六尺の体に渾然と成った一つの和らぎに、わずかの病もないのが一身の仁です。天地四方に満ちて渾然と成った一つの体に、わずかの隔たりもないのが、天下を合わせてその仁を成すということです。仁は全体であって、髪一筋の欠けもありません。仁は純粋であって、ごく小さな傷もありません。仁は天が成したものであって、少しの作り事もありません。多くの人は一つの心を分けて胡と越のように遠ざけ、聖人は天下を集めて自分の身とします。私はかつてこう言いました。天地の間に物と我の別はなく、万古はひとつの呼吸である、と。
解説
仁が三つの大きさで語られます。胸の内、体、そして天地四方。どれも渾然と一つであって隔たりが無いことが条件です。仁を情の問題ではなく、隔たりの有無として捉えているのが特徴です。そして対比が置かれます。多くの人は自分の心の中でさえ胡と越ほど引き離し、聖人は天下を集めて自分の身とする。結びの一句、天地の間に物と我の別はなく万古はひとつの呼吸である、が性命篇の到達点です。
この章句が説くこと
仁渾一隔たり物我呼吸
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