呻吟語 / 外篇・治道・治道は陽を尚び、兵道は陰を尚ぶ
治道尚陽,兵道尚陰;治道尚方,兵道尚圓。是惟無言,言必行;是惟無行,行必竟。易簡明達者,治之用也。有言之不必行者,有言之即行者,有行之後言者,有行之竟不言者,有行之非其所言者。融通變化,信我疑彼者,兵之用也。二者雜施,鮮不敗矣。
新字:治道尚陽,兵道尚陰;治道尚方,兵道尚円。是惟無言,言必行;是惟無行,行必竟。易簡明達者,治之用也。有言之不必行者,有言之即行者,有行之後言者,有行之竟不言者,有行之非其所言者。融通変化,信我疑彼者,兵之用也。二者雑施,鮮不敗矣。
書き下し
治道は陽を尚び、兵道は陰を尚ぶ。治道は方を尚び、兵道は圓を尚ぶ。是れ惟だ言ふ無し、言へば必ず行ふ。是れ惟だ行ふ無し、行へば必ず竟ふ。易簡明達なる者は、治の用なり。之を言ひて必ずしも行はざる者有り、之を言ひて即ち行ふ者有り、之を行ひて後に言ふ者有り、之を行ひて竟に言はざる者有り、之を行ひて其の言ふ所に非ざる者有り。融通變化し、我を信じ彼を疑はしむる者は、兵の用なり。二者雜へ施さば、敗れざること鮮し。
現代語訳
治める道は陽を尊び、兵の道は陰を尊びます。治める道は方を尊び、兵の道は円を尊びます。治める道は、言わないならそれまでで、言えば必ず行います。行わないならそれまでで、行えば必ず終えます。易しく簡潔で明らかに通じることが、治の働きです。言っても必ずしも行わないものがあり、言えばすぐ行うものがあり、行ってから言うものがあり、行ってもついに言わないものがあり、行ったことが言ったことと違うものがあります。融通し変化し、味方に信じさせ敵に疑わせることが、兵の働きです。二つを混ぜて施せば、敗れないことは稀です。
解説
治と兵を、陽と陰、方と円で対比します。治は言行が一致し、言えば必ず行い、行えば必ず終える。兵は五通りの言行の組み合わせを使い分け、味方に信じさせ敵に疑わせます。どちらも正しいのですが、混ぜると必ず敗れると釘が刺されます。兵の技を政治に持ち込めば信が崩れ、治の正直を戦に持ち込めば負けるからです。領域の混同を戒めた一段です。
この章句が説くこと
治兵陰陽方円言行混同
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