呻吟語 / 外篇・廣喻・其れ我を免ぜんか
一人買布一匹,價錢百五十,令染人青之,染人曰:「欲青,錢三百。」既染矣,逾年而不能取,染人牽而索之曰:「若負我錢三百,何久不與?吾訟汝。」買布者懼,跽而懇之曰:「我布值已百五十矣,再益百五十,其免我乎?」染人得錢而釋之。
新字:一人買布一匹,価銭百五十,令染人青之,染人曰:「欲青,銭三百。」既染矣,逾年而不能取,染人牽而索之曰:「若負我銭三百,何久不与?吾訟汝。」買布者懼,跽而懇之曰:「我布值已百五十矣,再益百五十,其免我乎?」染人得銭而釈之。
書き下し
一人布一匹を買ふ。價錢百五十なり。染人をして之を青からしむ。染人曰く、「青からんと欲せば、錢三百」と。既に染む。年を逾えて取る能はず。染人牽きて之を索めて曰く、「若は我に錢三百を負ふ。何ぞ久しく與へざる。吾汝を訟へん」と。布を買ふ者懼れ、跽きて之に懇して曰く、「我が布の值は已に百五十なり。再び百五十を益さば、其れ我を免ぜんか」と。染人錢を得て之を釋つ。
現代語訳
ある人が布を一匹買いました。代金は百五十銭です。染め屋に頼んで青く染めさせました。染め屋は言いました。青くしたければ三百銭。染め上がりました。年を越えても引き取れません。染め屋は引っ張って取り立てて言いました。お前は私に三百銭の借りがある。なぜ長く払わない。訴えるぞ。布を買った人は恐れ、跪いて頼んで言いました。私の布は百五十の値打ちです。もう百五十足せば、許してもらえますか。染め屋は銭を受け取って放しました。
解説
百五十の布に三百の染め賃という、逆転した取引の話です。引き取れなくなった買い主は、布を渡したうえにさらに百五十を払って解放されます。布も失い金も払うという結末です。染め賃が布の値より高い時点で成り立たない取引でしたが、進んでしまってから気づきます。前の段と同じく、途中では見えない損が描かれています。
この章句が説くこと
布染め賃逆転損気づかない
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