呻吟語 / 内篇・存心・惟だ理義の我が心を悅ばしむるのみ
未有甘心快意而不殃身者。惟理義之悅我心,卻步步是安樂境。
新字:未有甘心快意而不殃身者。惟理義之悦我心,却歩歩是安楽境。
書き下し
未だ甘心快意にして身に殃ひせざる者有らず。惟だ理義の我が心を悅ばしむるは、卻つて步步是れ安樂の境なり。
現代語訳
思いを遂げて気持ちよくなって、身に災いのなかった例はありません。ただ道理と義が自分の心を喜ばせるときだけは、一歩ごとに安らかで楽な境地です。
解説
快の二種類が対比されます。思いを遂げた気持ちよさには必ず災いがつくが、道理と義が心を喜ばせるときは一歩ごとに安楽だ、と。孟子の、理義の我が心を悦ばしむるは芻豢の我が口を悦ばしむるがごとし、が下敷きになっています。楽しむことを否定せず、どちらの楽しみを取るかという選択として示すので、禁欲の説教になっていません。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
快意災い理義安楽選択
関連する章句
-
『学問のすゝめ』十六編・心事と働きと相当すべきの論・心事高尚ならざれば働きもまた高尚なるを得ず第一 人の働きには、大小軽重の別あり。芝居も人の働きなり、学問も人の働きなり、人力車を挽くも、蒸気船を運用するも、鍬をとりて農業するも、筆を揮いて著述するも、等しく人の働きなれども、役者たるを好まずして学者たるを勤め、車挽きの仲間に入らずして航海の術を学び、百姓の仕事を不満足なりとして著書の業に従事するがごときは、働きの大小軽重を弁別し、軽小を捨てて重大に従うものなり。人間の美事と言うべし。然りしこうして、そのこれを弁別せしむるものはなんぞや。本人の心なり、また志なり。かかる心志ある人を名づけて心事高尚なる人物と言う。ゆえにいわく、人の心事は高尚ならざるべからず、心事高尚ならざれば働きもまた高尚なるを得ざるなり。
-
うひ山ぶみ・第八段然はあれども、まづかの学のしなじなは、他よりしひて、それをとはいひがたし、大抵みづから思ひよれる方にまかすべき也、
-
『呻吟語』内篇・問學・學は擇ぶ有るを貴ぶ百家を羅ぬる者は、浩瀚の詞多し。一家に工みなる者は、獨詣の語有り。學者限り有るの目力を以て、其の律涯を竟へんと欲し、鹵莽の心思を以て、其の蘊奧を探らんと欲す。豈に難からずや。故に學は擇ぶ有るを貴ぶ。
-
易経・隨卦官渝わる有りとは、正に従えば吉なるなり。門を出でて交われば功有りとは、失わざるなり。小子に系るとは、兼ね与せざるなり。丈夫に系るとは、志下を舎つるなり。随いて獲る有りとは、其の義凶なるなり。孚有りて道に在りとは、明の功なり。嘉に孚あり、吉とは、位正中なればなり。之を拘系すとは、上窮まるなり。
-
孟子・離婁章句下孟子曰く、「以て取る可く、以て取る無かる可し。取れば廉を傷つく。以て與う可く、以て與うる無かる可し。與うれば惠を傷つく。以て死す可く、以て死する無かる可し。死すれば勇を傷つく。」
-
孫子・行軍篇之を令するに文を以てし、之を斉うるに武を以てす。是を必取と謂う。