呻吟語 / 内篇・存心・只だ君の此の問ひ、便ち是れ收め了る
或問:「放心如何收?」余曰:「只君此問,便是收了。這放收甚容易,才昏昏便出去,才惺惺便在此。」
新字:或問:「放心如何収?」余曰:「只君此問,便是収了。這放収甚容易,才昏昏便出去,才惺惺便在此。」
書き下し
或ひと問ふ、「放心は如何にして收めん」と。余曰く、「只だ君の此の問ひ、便ち是れ收め了るなり。這の放收は甚だ容易し。才かに昏昏たれば便ち出で去り、才かに惺惺たれば便ち此に在り」と。
現代語訳
ある人が問いました。放れた心はどうやって取り戻すのでしょうか。私は答えました。あなたのその問いが、すでに取り戻したということです。この放れることと収めることは、たいへんたやすい。ぼんやりすればすぐ出ていき、はっきり目覚めればすぐここにある。
解説
問いそのものが答えになるという応答です。どうやって取り戻すかと問えた時点で、もう心はここに戻っている、と。方法を求める人に方法を渡さず、今の状態を指し示すやり方です。そして仕組みが明かされます。ぼんやりすれば出ていき、目覚めればここにある。取り戻すのに手続きは要らず、気づくことがそのまま回復だという説明で、前段の鷹の話とも通じています。
この章句が説くこと
放心自覚即時方法惺惺
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『呻吟語』内篇・存心・心の放つと放たざるとは、邪正の上に在り心の放つと放たざるとは、邪正の上に在りて說くを要す、出入の上に在りて說かず。且つ高く山林に臥して心を廊廟に遊ばしめ、身は衰世に處りて唐虞を夢想し、游子は親を思ひ、貞婦は夫を懷ふがごとき、這れ是れ個の放心なりや否や。若し邪正を論ぜず、只だ出入を較ぶれば、卻つて是れ禪定の學なり。
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『呻吟語』内篇・存心・君子の心は、習鷹馴雉のごとし放心を收むるは、放豚を追ふがごとくなるを休めよ。既に苙に入れ了らば、便ち他をして從容閑暢ならしめ、拘迫懊憹の狀無からしむ。若し他の收め難きを恨み、一向に束縛して此に在らば、放失すると同じ。何者ぞ。同じく無得に歸すればなり。故に再び放てば便ち奔逸して收拾す可からず。君子の心は、習鷹馴雉のごとし。搏擊飛騰するも、主人略ぼ防閑せず。臂に上り庭に歸るに及びては、卻つて恁く機を忘れて自得し、略ぼ驚畏せず。
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