呻吟語 / 外篇・品藻・何為れぞ道邊に死す
曲如煉鐵鉤,直似脫弓弦,不覓封侯貴,何為死道邊。
新字:曲如煉鉄鉤,直似脫弓弦,不覓封侯貴,何為死道辺。
書き下し
曲がること煉鐵の鉤の如く、直きこと脫弓の弦に似たり。封侯の貴を覓めずんば、何為れぞ道邊に死す。
現代語訳
曲がることは鍛えた鉄の鉤のようで、まっすぐなことは弓から外した弦のようだ。諸侯に封じられる貴さを求めないなら、どうして道端で死ぬことになるのか。
解説
後漢の童謡を引いた一段です。曲がった者が鉤のように立身し、まっすぐな者が弦のように捨てられる。そして反語で締めます。貴さを求めなかったのに、なぜ道端で死ぬのか。世の倒錯を、民間の歌の形で示した一段で、前後の重い議論のあいだに置かれると、いっそう苦い響きを持ちます。民の歌だからこそ、遠慮の無い苦さが出ています。
この章句が説くこと
倒錯曲直立身童謡苦さ
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・治道・憂時者は傷心して之を慟む吏治安んぞ修舉するを得ん。民生安んぞ輯寧なるを得ん。時を憂ふる者は、傷心して之を慟む。
-
『呻吟語』内篇・談道・人一生道を聞かざるは、真に憐れむ可し人一生道を聞かざるは、真に憐れむ可し。
-
『呻吟語』外篇・治道・匹馬單車も鈞天の樂を聽くが如し大纛高牙、鳴金奏管、飛旌卷蓋、清道唱騶あらば、輿中の人は志驕り意得たり。蒼生の疾苦は幾何ぞ。職業の修廢は幾何ぞ。心に愧づる無からしめば、即ち匹馬單車も、鈞天の樂を聽くが如し。然らずんば是れ益ます吾が過ちを厚くするなり。婦人孺子は豈に驚炫せざらんや。恐らくは有道者之を笑はん。故に君子の車服儀從は等威を辨ずるに足るのみ。汲汲とする所は固より自ら在る有り。
-
『呻吟語』外篇・治道・惟だ邱民のみ收拾し難し無事の時は惟だ邱民のみ蹂踐し好し。吏卒より以上、人人得て之を魚肉す。有事の時は惟だ邱民のみ收拾し難し。天子と雖も亦た躲避する處無し。何ぞ況んや衣冠をや。此れ詩を誦し書を讀む者と道ひ難きなり。
-
『呻吟語』外篇・治道・鐵錚錚として做し將ち去る自家の官を別人に靠り著けて做す。只だ是れ腳跟を踏み定め身を挺して自ら拔くを肯んぜず。此れ縉紳第一の恥事なり。若し鐵錚錚として做し將ち去らば、他の如何なるに任すも、亦た顛躓僵僕せざる時有り。縱ひ顛躓僵僕せしむるも、也た奈何ともす可き無く、自ら是れ照管し得ず。
-
『呻吟語』外篇・品藻・世道奚ぞ賴らんや識は千古に高く、慮は六合に週く、末世の頹風を挽き、先王の雅道に還り、海内をして復た秦漢以前の滋味を嘗めしむれば、則ち又た圈子以上の人なり。世に斯の人有らんか。吾將に之と共に流涕せんとす。乃ち若し硜硜として眾見に狃れ、惴惴として弊規に循ひ、威儀文辭燦然として觀る可く、勤慎謙默居然として過ち寡きは、是の人や、但だ高官と為る可きのみ。世道奚ぞ賴らんや。