呻吟語 / 外篇・治道・恩威は餘り有らしむ
恩威當使有餘,不可窮也。天子之恩威,止於爵三公、夷九族。恩威盡,而人思以勝之矣。故明君養恩不盡,常使人有餘榮;養威不盡,常使人有餘懼。此久安長治之道也。
新字:恩威当使有余,不可窮也。天子之恩威,止於爵三公、夷九族。恩威尽,而人思以勝之矣。故明君養恩不尽,常使人有余栄;養威不尽,常使人有余懼。此久安長治之道也。
書き下し
恩威は當に餘り有らしむべく、窮む可からざるなり。天子の恩威は、三公に爵し、九族を夷ぐに止まる。恩威盡きて、人以て之に勝たんことを思ふ。故に明君は恩を養ひて盡くさず、常に人をして餘榮有らしむ。威を養ひて盡くさず、常に人をして餘懼有らしむ。此れ久安長治の道なり。
現代語訳
恩と威は余りがあるようにすべきで、使い尽くしてはいけません。天子の恩と威は、三公に爵を与え、九族を滅ぼすところで止まります。恩と威が尽きれば、人はそれに勝とうと思い始めます。だから明君は恩を養って使い尽くさず、常に人に余った栄誉があるようにします。威を養って使い尽くさず、常に人に余った畏れがあるようにします。これが久しく安らかで長く治まる道です。
解説
恩と威に上限があることを、具体的に示します。最高でも三公の爵と九族の誅です。だから使い尽くせば、それ以上は無いと分かってしまう。その時点で人は勝とうと思い始めます。処方は温存で、常に余りを残しておくこと。余った栄誉と余った畏れが、次への期待と歯止めになります。前に出てきた、威を軽々しく使わないという段の、理由にあたる一段です。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
恩威上限温存余裕歯止め
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