呻吟語 / 内篇・問學・真に時を愛す
這一口呼吸去,萬古再無復返之理。呼吸暗積,不覺白頭,靜觀君子所以撫髀而愛時也。然而愛時不同,富貴之士歎榮顯之未極,功名之士歎事業之末成,放達之士恣情於酒以樂餘年,貪鄙之士苦心于家以遺後嗣。然猶可取者,功名之士耳。彼三人者,何貴於愛時哉?惟知道君子憂年數之日促,歎義理之無窮,天生此身無以稱塞,誠恐性分有缺,不能全歸,錯過一生也。此之謂真愛時。所謂此日不再得,此日足可惜者,皆救火追亡之念,踐形盡性之心也。嗚呼!不患無時,而患奔時。苟不棄時,而此心快足,雖夕死何恨?不然,即百歲,幸生也。
新字:這一口呼吸去,万古再無復返之理。呼吸暗積,不覚白頭,静観君子所以撫髀而愛時也。然而愛時不同,富貴之士嘆栄顕之未極,功名之士嘆事業之末成,放達之士恣情於酒以楽余年,貪鄙之士苦心于家以遺後嗣。然猶可取者,功名之士耳。彼三人者,何貴於愛時哉?惟知道君子憂年数之日促,嘆義理之無窮,天生此身無以称塞,誠恐性分有欠,不能全帰,錯過一生也。此之謂真愛時。所謂此日不再得,此日足可惜者,皆救火追亡之念,践形尽性之心也。嗚呼!不患無時,而患奔時。苟不棄時,而此心快足,雖夕死何恨?不然,即百歳,幸生也。
書き下し
這の一口の呼吸去れば、萬古再び復返の理無し。呼吸暗に積みて、覺えず白頭たり。靜かに觀れば君子の髀を撫でて時を愛する所以なり。然れども時を愛するは同じからず。富貴の士は榮顯の未だ極まらざるを歎じ、功名の士は事業の未だ成らざるを歎じ、放達の士は情を酒に恣にして以て餘年を樂しみ、貪鄙の士は心を家に苦しめて以て後嗣に遺す。惟だ道を知る君子のみ年數の日に促るを憂へ、義理の窮まり無きを歎じ、天の此の身を生ずるに以て稱塞する無く、誠に性分に缺くる有りて、全く歸する能はず、一生を錯過せんことを恐るるなり。此れを之れ真に時を愛すと謂ふ。
現代語訳
この一息が出て行けば、万古にわたって戻る理はありません。呼吸がひそかに積もり、気づかぬうちに白髪になります。静かに観れば、君子が股を撫でて時を惜しむ理由が分かります。ただし時の惜しみ方は同じではありません。富貴の士は栄達がまだ極まらないと嘆き、功名の士は事業がまだ成らないと嘆き、放達の士は酒に思いを任せて残りの年を楽しみ、貪り卑しい士は家のことに心を砕いて子孫に遺します。ただ道を知る君子だけが、年数が日ごとに縮まるのを憂え、義理が窮まり無いのを嘆き、天がこの身を生んだのに応え塞ぐものが無く、本当に本分に欠けがあって全きまま返せず、一生を取り落とすことを恐れるのです。これを本当に時を惜しむと言います。
解説
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