呻吟語 / 内篇・應務・一物に一物の合有り
覆諸其上而不廣不狹,旁視其隙而若有若無。一物有一物之合,不相苦窳;萬物各有其合,不相假借。此之謂天則,此之謂大中,此之謂天下萬事萬物各得其所,而聖人之所以從容中,賢者之所以精一求,眾人之所以醉心夢意、錯行亂施者也。
新字:覆諸其上而不広不狭,旁視其隙而若有若無。一物有一物之合,不相苦窳;万物各有其合,不相仮借。此之謂天則,此之謂大中,此之謂天下万事万物各得其所,而聖人之所以従容中,賢者之所以精一求,眾人之所以酔心夢意、錯行乱施者也。
書き下し
諸を其の上に覆ひて廣からず狹からず、其の隙を旁視するに有るが若く無きが若し。一物に一物の合有り、相ひ苦窳ならず。萬物各おの其の合有り、相ひ假借せず。此れを之れ天則と謂ひ、此れを之れ大中と謂ひ、此れを之れ天下萬事萬物各おの其の所を得と謂ふ。而して聖人の從容として中る所以、賢者の精一もて求むる所以、眾人の心に醉ひ意に夢みて、行を錯り施を亂る所以なり。
現代語訳
上から覆ってみて広すぎず狭すぎず、隙間を横から見ればあるようで無いようです。一つの物には一つの合いがあって、互いに歪みません。万物にはそれぞれの合いがあって、互いに借り合いません。これを天の則と言い、大いなる中と言い、天下の万事万物がそれぞれの居場所を得ると言います。そして聖人がゆったりと当たる理由であり、賢者が精しく一つに求める理由であり、大勢の人が心を酔わせ意を夢見て、行いを誤り施しを乱す理由でもあります。
解説
蓋が器にぴたりと合う様子を、隙間があるようで無いと描きます。そしてその一致が万物それぞれに固有であり、借り合えないとします。この精度を天則と呼び、大中と呼ぶ。抽象的な中庸の概念が、蓋と器の隙間という手触りにまで降りてきています。聖人と賢者と衆人の違いも、この合いを掴めるかどうかで説明されます。抽象的な中庸が、蓋と器の隙間にまで降りてきています。
この章句が説くこと
適合天則大中固有精度
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