呻吟語 / 外篇・治道・大を投じ艱を遺す
而今舉世有一大迷,自秦、漢以來,無人悟得。官高權重,原是投大遺艱。譬如百鈞重擔,須尋烏獲來擔;連雲大廈,須用大木為柱。乃朝廷求賢才,借之名器以任重,非朝廷市私思,假之權勢以榮人也。今也崇階重地,用者以為榮,人重以予其所愛,而固以吝於所疏,不論其賢不賢。其用者以為榮,己未得則眼穿涎流以干人,既得則捐身樓骨以感德,不計其勝不勝。
新字:而今舉世有一大迷,自秦、漢以来,無人悟得。官高権重,原是投大遺艱。譬如百鈞重担,須尋烏獲来担;連雲大廈,須用大木為柱。乃朝廷求賢才,借之名器以任重,非朝廷市私思,仮之権勢以栄人也。今也崇階重地,用者以為栄,人重以予其所愛,而固以吝於所疏,不論其賢不賢。其用者以為栄,己未得則眼穿涎流以干人,既得則捐身楼骨以感徳,不計其勝不勝。
書き下し
而今舉世に一大迷有り。秦・漢より以來、人の悟り得る無し。官高く權重きは、原と是れ大を投じ艱を遺すなり。譬へば百鈞の重擔は、須らく烏獲を尋ねて來たりて擔はしむべし。連雲の大廈は、須らく大木を用ひて柱と為すべし。乃ち朝廷の賢才を求むるは、之に名器を借して以て重きに任ぜしむるなり。朝廷の私思を巿りて、之に權勢を假して以て人を榮えしむるに非ざるなり。今や崇階重地は、用ふる者以て榮と為し、人重んじて以て其の愛する所に予へ、而して固より以て疏なる所に吝む。其の賢不賢を論ぜず。其の用ひらるる者以て榮と為し、己未だ得ざれば則ち眼穿ち涎流して以て人に干め、既に得れば則ち身を捐て骨を樓めて以て德に感ず。其の勝ふると勝へざるとを計らず。
現代語訳
今、世を挙げて一つの大きな迷いがあります。秦漢より後、誰も悟れていません。官が高く権が重いのは、もともと大きな荷を投げ渡し難事を託すことです。百鈞の重荷は、烏獲のような力士を探してきて担わせるべきです。雲に連なる大きな家は、大木を柱にすべきです。朝廷が賢才を求めるのは、名と器を貸して重い務めを任せるためです。朝廷が私情を売って、権勢を貸して人を栄えさせるためではありません。今は高い位と重い地位を、用いる側が栄誉と考え、人はそれを重んじて可愛い者に与え、疎い者には惜しみます。賢いかどうかを論じません。用いられる側も栄誉と考え、得ないうちは目を見開き涎を垂らして人に求め、得たあとは身を捨て骨を折って恩に感じます。務まるかどうかを考えません。
解説
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