呻吟語 / 外篇・治道・階に級有り
禮之有次第也,猶堂之有階,使人不得驟僭也。故等級不妨於太煩。階有級,雖疾足者不得闊步;禮有等,雖倨傲者不敢凌節。
新字:礼之有次第也,猶堂之有階,使人不得驟僭也。故等級不妨於太煩。階有級,雖疾足者不得闊歩;礼有等,雖倨傲者不敢凌節。
書き下し
禮の次第有るは、猶ほ堂の階有るがごとし。人をして驟かに僭する得ざらしむ。故に等級は太だ煩はしきを妨げず。階に級有らば、疾足の者と雖も闊步するを得ず。禮に等有らば、倨傲なる者と雖も敢へて節を凌がず。
現代語訳
礼に順序があるのは、堂に階段があるようなものです。人が急に分を越えられないようにします。だから等級は煩わしすぎても差し支えありません。階段に段があれば、足の速い者でも大股で歩けません。礼に等級があれば、傲慢な者でも敢えて節を越えません。
解説
礼の等級を、階段の段に譬えます。段があるから、足の速い者でも大股で歩けない。この比喩が要点で、速い者を止める仕掛けとして等級が働きます。だから煩わしすぎても構わないとされます。普通は簡素が好まれますが、ここでは逆です。傲慢な者でも節を越えないという効果が示され、形式の意味が具体的に説明された一段になっています。
この章句が説くこと
礼等級階段僭越形式
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・修身・情を飾ると偽を飾る先王の禮文は用て情を飾る。後世の禮文は用て偽を飾る。情を飾れば則ち三千三百、至繁なりと雖も、其の率真爲るを害せず。偽を飾れば則ち一揖一拜と雖も、已に自ら多し。後の偽を飾るを惡む者は、乃ち一切苟簡決裂して、以て天下の防を潰し、而して自ら之を率真と謂ふ。將に伯子の簡に流れて行ふ可からざらんとす。又た禮の賊なり。
-
『呻吟語』内篇・談道・禮は情より生ず瓜・李將に熟せんとすれば、浮白生ず。禮は情より生ずるに、後世乃ち禮を以て情と為す。哀しいかな。
-
論語・八佾篇林放礼の本を問う。子曰く、「大なるかな問いや。礼は其の奢らんよりは、寧ろ倹せよ。喪は其の易めんよりは、寧ろ戚めよ。」
-
『宋名臣言行録』前集巻十・胡瑗侍講、召對に當たりて、例として須らく先ず閣門に就きて儀を習うべし。侍講曰く、吾が平生讀む所の書は、即ち君に事うるの禮なり。何ぞ習うを以て爲さんと。閣門奏す。上、舟次に就きて之を習わしむ。侍講固く辭す。上も亦た之を强いず。人皆謂う、山野の人、必ず儀を失わんと。對に登るに及び、乃ち大いに旨に稱う。上、左右に謂いて曰く、胡瑗の進退周旋、擧げて古禮に合うと。
-
論語・八佾篇子曰く、君に事えて礼を尽くせば、人以て諂いと為すなり。
-
論語・八佾篇子曰く、『夏の礼、吾能く之を言う。杞は徵すに足らず。殷の礼、吾能く之を言う。宋は徵すに足らず。文献足らざる故なり。足らば、則ち吾能く之を徵せん。』