呻吟語 / 内篇・修身・天地に欠缺の體有り
物忌全盛,事忌全美,人忌全名。是故天地有欠缺之體,聖賢無快足之心。而況瑣屑群氓,不安淺薄之分,而欲滿其難厭之欲,豈不安哉?是以君子見益而思損,持滿而思溢,不敢恣無涯之望。
新字:物忌全盛,事忌全美,人忌全名。是故天地有欠欠之体,聖賢無快足之心。而況瑣屑群氓,不安浅薄之分,而欲満其難厭之欲,豈不安哉?是以君子見益而思損,持満而思溢,不敢恣無涯之望。
書き下し
物は全盛を忌み、事は全美を忌み、人は全名を忌む。是の故に天地に欠缺の體有り、聖賢に快足の心無し。而るに況んや瑣屑たる群氓、淺薄の分に安んぜずして、其の厭ひ難きの欲を滿たさんと欲す。豈に安からんや。是を以て君子は益を見て損を思ひ、滿を持して溢を思ひ、敢へて無涯の望を恣にせず。
現代語訳
物は完全に盛んであることを避け、事は完全に美しいことを避け、人は完全な名声を避けます。だから天地には欠けた形があり、聖賢には満ち足りた心がありません。まして小さな民たちが、浅く薄い自分の分に安んじず、飽きることのない欲を満たそうとする。どうして安らかでいられるでしょうか。だから君子は利益を見れば損を思い、満ちたものを持てばあふれることを思い、限りない望みをほしいままにしません。
解説
完全であることを、三つの領域で避けるべきものとして挙げます。そして天地にさえ欠けた形があり、聖賢にさえ満足が無いと続ける。最上のものが完全でないなら、人が完全を求めるのは筋違いだという論法です。利益を見て損を思い、満ちたものを見てあふれを思う。同じ物を見ながら反対側を考える習慣が、結論として置かれています。
この章句が説くこと
完全欠け満足欲警戒
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