呻吟語 / 内篇・存心・無邊の風月自在なり
余甚愛萬籟無聲、蕭然一室之趣。或曰:「無乃太寂滅乎?」曰:「無邊風月自在。」
新字:余甚愛万籟無声、蕭然一室之趣。或曰:「無乃太寂滅乎?」曰:「無辺風月自在。」
書き下し
余甚だ萬籟聲無く、蕭然たる一室の趣を愛す。或ひと曰く、「乃ち太だ寂滅なること無きか」と。曰く、「無邊の風月自在なり」と。
現代語訳
私は、あらゆる音が絶えて、ひっそりとした一室の趣をたいへん愛します。ある人が言いました。それではあまりに寂しく滅した感じではありませんか。答えます。果てしない風と月が、そのままそこにあります。
解説
静けさを寂しさと見る人に、短く返す一段です。音が絶えた部屋を愛すると言えば、寂滅にすぎると言われる。それに対して、そこには果てしない風と月があると答えます。何も無いのではなく、音が引いたあとに広がるものがある、と。前に置かれた、内側は空々寂々だが求めれば何でもある、という一段と同じ構えです。問答二往復の軽さが効いています。
この章句が説くこと
静寂寂滅風月余白反論
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