呻吟語 / 内篇・應務・人若し我を信ぜば、何ぞ辯に事とせん
事物之理有定,而人情意見千歧萬逕,吾得其定者而行之,即形跡可疑,心事難白,亦付之無可奈何。若惴惴畏譏,瑣瑣自明,豈能家置一喙哉?且人不我信,辯之何益?人若我信,何事於辯?若事有關涉,則不當以緘默妨大計。
新字:事物之理有定,而人情意見千歧万逕,吾得其定者而行之,即形跡可疑,心事難白,亦付之無可奈何。若惴惴畏譏,瑣瑣自明,豈能家置一喙哉?且人不我信,弁之何益?人若我信,何事於弁?若事有関渉,則不当以緘黙妨大計。
書き下し
事物の理に定まる有り。而れども人情意見は千歧萬逕なり。吾其の定まる者を得て之を行はば、即ち形跡疑ふ可く、心事白し難きも、亦た之を無可奈何に付す。若し惴惴として譏りを畏れ、瑣瑣として自ら明らかにせば、豈に能く家ごとに一喙を置かんや。且つ人我を信ぜずんば、之を辯ずるも何の益あらん。人若し我を信ぜば、何ぞ辯に事とせん。若し事に關涉有らば、則ち當に緘默を以て大計を妨ぐべからず。
現代語訳
事物の理には定まったところがあります。しかし人の情や意見は千も万も枝分かれします。私は定まったほうを掴んで行うので、たとえ形跡が疑わしく、心の内を白く証しにくくても、どうにもならないこととして預けます。もしびくびくと譏りを恐れ、こまごまと自分を弁明したら、家々に一つずつ口を置けるでしょうか。それに人が私を信じないなら、弁明しても何の益があるでしょう。人がもし私を信じるなら、どうして弁明する必要があるでしょう。ただし事に関わりがあるなら、黙っていて大計を妨げてはいけません。
解説
弁明の無意味さを、二方向から示します。信じない相手には効かず、信じる相手には要らない。だからどちらにしても弁明は要らないことになります。家々に口を置けるかという比喩も効いていて、弁明の届く範囲の狭さが分かります。そして最後に例外を一つ、事に関わるなら黙るなと添えるのが丁寧なところです。弁明の届く範囲の狭さが、家々の比喩で分かります。
この章句が説くこと
弁明信用無意味範囲例外
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