呻吟語 / 内篇・應務・萬福は皆な退反に生ず
過責望人,亡身之念也。君子相與,要兩有退心,不可兩有進心。自反者,退心也。故剛兩進則碎,柔兩進則屈,萬福皆生於退反。
新字:過責望人,亡身之念也。君子相与,要両有退心,不可両有進心。自反者,退心也。故剛両進則砕,柔両進則屈,万福皆生於退反。
書き下し
過ちて人を責望するは、身を亡ぼすの念なり。君子相與するは、兩つながら退心有るを要し、兩つながら進心有る可からず。自反する者は、退心なり。故に剛は兩つながら進めば則ち碎け、柔は兩つながら進めば則ち屈す。萬福は皆な退反に生ず。
現代語訳
過ちがあったのに人を責め望むのは、身を滅ぼす心です。君子が互いに関わるときは、双方に退く心があるべきで、双方に進む心があってはなりません。自分に立ち返るのが退く心です。だから剛い者が双方とも進めば砕け、柔らかい者が双方とも進めば屈します。万の福は、みな退いて自分に返るところから生まれます。
解説
双方が前に出れば必ず壊れる、という力学を示します。剛同士なら砕け、柔同士なら屈する。硬軟を問わず同じ結果になるのが要点です。だから双方に退く心が要り、その退く心とは自分に立ち返ることだとされます。前に出てきた、柔と柔でも音はしないという段と合わせると、押し合いの構造がよく見えてきます。硬軟を問わず同じ結果になるのが、要点になっています。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
退く自反押し合い剛柔福
関連する章句
-
易経・遯卦遯るるに尾たるの厲きは、往かざれば何の災いかあらん。執うるに黄牛を用うとは、志を固くするなり。系りて遯るるの厲きは、疾有りて憊るればなり。臣妾を畜えば吉とは、大事にすべからざるなり。君子は好しとして遯る、小人は否ざるなり。嘉く遯る、貞にして吉とは、以て志を正せばなり。肥かに遯る、利ろしからざる无しとは、疑う所无きなり。
-
『呻吟語』内篇・修身・退いて極處に到れば身を安んずるに愁へず一分を克ち、百分、千萬分、克ち得て盡くる時、才かに生ある真の我有るを見る。一步を退き、百步、千萬步、退きて極處に到れば、身を安んずる處無きを愁へず。
-
『呻吟語』内篇・應務・退く者は常に倍を得柔は剛に勝ち、訥は辯を止め、讓は爭ひを愧ぢしめ、謙は傲を伏す。是の故に退く者は常に倍を得、進む者は常に倍を失ふ。
-
『呻吟語』外篇・治道・引身して退くのみ近世の士風は大いに哀れむ可きのみ。英雄豪傑は本と宇宙の為に大綱常、大事業を樹立せんと欲す。今や、之を俗套に驅り、繩ぶに虛文を以てす。首を俯し聲を吞みて以て從はずんば、惟だ身を引きて退く有るのみ。是を以て道德の士は遠く引き高く蹈み、功名の士は屈を以て伸を養ふ。彼の上に在る者は倨傲習ひを成し、下面の人を看ること皆な王順長息のみ。
-
易経・蹇卦周易 第三十九卦。艮下坎上。易経。蹇(けん)は、西南に利あり、東北に利あらず。大人を見るに利あり、貞にして吉。初六、往けば蹇(なや)み、来れば誉れあり。六二、王臣蹇蹇(けんけん)たり、躬(み)の故に匪ず。九三、往けば蹇み来れば反(かへ)る。六四、往けば蹇み来れば連なる。九五、大いに蹇みて朋来る。上六、往けば蹇み来れば碩(おほ)いなり、吉。大人を見るに利あり。彖に曰く、
-
論語・微子篇微子これを去り、箕子これに為に奴となり、比干諫めて死す。孔子曰わく、殷に三仁有り。