呻吟語 / 外篇・天地・勢極まれば必ず反る
大抵陰陽之氣一偏必極,勢極必反。陰陽乖戾而分,故孤陽亢而不下陰則旱,無其極,陽極必生陰,故久而雨;陰陽和合而留,故淫陰升而不捨陽則雨,無其極,陰極必生陽,故久而睛。
新字:大抵陰陽之気一偏必極,勢極必反。陰陽乖戻而分,故孤陽亢而不下陰則旱,無其極,陽極必生陰,故久而雨;陰陽和合而留,故淫陰升而不捨陽則雨,無其極,陰極必生陽,故久而睛。
書き下し
大抵陰陽の氣は一たび偏れば必ず極まり、勢極まれば必ず反る。陰陽乖戾して分かる。故に孤陽亢りて陰に下らざれば則ち旱す。其の極まる無くんばあらず、陽極まれば必ず陰を生ず。故に久しくして雨ふる。陰陽和合して留まる。故に淫陰升りて陽を捨てざれば則ち雨ふる。其の極まる無くんばあらず、陰極まれば必ず陽を生ず。故に久しくして睛る。
現代語訳
おおよそ陰陽の気はひとたび偏れば必ず極まり、勢いが極まれば必ず反ります。陰陽がねじけて分かれる。だから陽だけが高ぶって陰に下らなければ日照りになります。それが極まらないことはなく、陽が極まれば必ず陰を生みます。だから長く続けば雨が降ります。陰陽が和して留まる。だから湿った陰が昇って陽を離さなければ雨になります。それが極まらないことはなく、陰が極まれば必ず陽を生みます。だから長く続けば晴れます。
解説
日照りと長雨を、極まれば反るという原理で説明します。どちらも自分で自分の反対を生むので、必ず終わります。だから待てばよいという含みが読み取れます。前に出てきた、合いきれば離れ離れきれば合うという段と同じ構図で、こちらは天候という誰にでも確かめられる例で示されています。だから待てばよい、という含みが読み取れる一段です。
この章句が説くこと
極反日照り長雨循環待つ
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・天地・極まれば則ち必ず離れ必ず合す陰陽合ふ時は只管合ふ。合ひ極まれば則ち離る。離るる時は只管離る。離れ極まれば則ち合ふ。極まらざれば則ち離れず合はず。極まれば則ち必ず離れ必ず合す。
-
『呻吟語』外篇・天地・陰陽は萬物に原と相干せず萬物は陰陽に生じ、陰陽に死す。陰陽は萬物に於て原と相干せず、其の自然に任するのみ。雨は物を潤さんと欲するに非ず、旱は物を熯さんと欲するに非ず、風は物を撓さんと欲するに非ず、雷は物を震はんと欲するに非ず。陰陽は其の氣の自然に任せて、萬物之に因りて以て生死するのみ。若し心有りて化を成さば、則ち寒暑災樣其の正を得て、乃ち天心を見んか。
-
『呻吟語』外篇・天地・均しければ則ち各おの足る輕清の氣は霜露と為り、濃濁の氣は雲雨と為る。春雨少なきは、薰蒸の氣未だ濃からざればなり。春に雨多ければ則ち夏の氣を沁し、而して夏雨必ず少なし。夏に雨多きは、薰蒸の氣餘り有ればなり。夏に雨少なければ則ち積氣の餘、而して秋雨必ず多し。總じて、一個の陰陽、一般の分數なり。先に餘り有れば則ち後に足らず、此に餘り有れば則ち彼に足らず。均しければ則ち各おの足る。是れを太和と謂ふ。太和の歲は、九有皆な豐かなり。
-
『呻吟語』外篇・天地・久しく陰なれば則ち權は雨に在り風は惟だ其の吹拂を知るのみ、雨は惟だ其の淋漓を知るのみ、雪は惟だ其の嚴凝を知るのみ、水は惟だ其の流行を知るのみ、火は惟だ其の燔灼を知るのみ。足らざれば則ち息を屏めて各おの其の用を藏し、餘り有れば則ち猖狂して各おの其の性を恣にす。卒然として感ずれば則ち強き者勝つ。兩軍交戰して、相下りて後已むが若し。是の故に久しく陰なれば則ち權は雨に在りて、日月明を為し難く、久しく旱なれば則ち權は風に在りて、雲雨澤を為し難し。以て水火霜雪に至るまで皆な然らざる莫し。誰か之を為す。
-
『呻吟語』外篇・天地・惟だ續なり、惟だ漸なり定まれば則ち水、燥けば則ち火なり。吾が心自ら水火有り。靜なれば則ち寒、動けば則ち熱なり。吾が身自ら冰炭有り。然らば則ち天地の冰炭は誰か之を為す。亦た動靜之を為すなり。陽極まらざれば則ち陰を生ずる能はず、陰極まらざれば則ち陽を生ずる能はず。勢窮まれば則ち反ればなり。蓋し陰陽の氣は續接して直接に非ず、直接なれば則ち絕ゆ。漸至にして驟至に非ず、驟至なれば則ち激す。二氣萬古長存し、萬物四時成遂するは、皆な續と漸と之を為すなり。惟だ續なり、故に已まず。惟だ漸なり、故に跡無し。
-
『呻吟語』外篇・治道・泰の極は其れ懼る可し暑の將に退かんとするや先づ燠く、天の將に旦けんとするや先づ晦し。丸を壁に投ずるに、疾ければ則ち內に射る。物極まれば則ち反り、極まらざれば則ち反らざるなり。故に愚者は惟だ其の極を樂しみ、智者は先づ其の反るを懼る。然らば則ち否は極に害あらず、泰の極は其れ懼る可し。