呻吟語 / 内篇・倫理・惟だ子孝にして夫端ならば
繼母之虐,嫡妻之妒,古今以為恨者也;而前子不孝,丈夫不端,則捨然不問焉。世情之偏也,久矣!懷非母之跡而因似生嫌,借恃父之名而無端造謗,怨讟忤逆,父亦被誣者,世豈無耶?恣淫狎之性而恩重綠絲,挾城社之威而侮及黃裡,《谷風》、《栢舟》,妻亦失所者,世豈無耶?惟子孝夫端,然後繼母嫡妻無辭於姻族矣!居官不可不知。
新字:継母之虐,嫡妻之妒,古今以為恨者也;而前子不孝,丈夫不端,則捨然不問焉。世情之偏也,久矣!懐非母之跡而因似生嫌,借恃父之名而無端造謗,怨讟忤逆,父亦被誣者,世豈無耶?恣淫狎之性而恩重綠糸,挟城社之威而侮及黄裡,《谷風》、《栢舟》,妻亦失所者,世豈無耶?惟子孝夫端,然後継母嫡妻無辞於姻族矣!居官不可不知。
書き下し
繼母の虐、嫡妻の妒は、古今以て恨みと為す所なり。而るに前子の不孝、丈夫の不端は、則ち捨然として問はず。世情の偏なること、久し。非母の跡を懷ひて似に因りて嫌を生じ、恃父の名を借りて端無く謗を造り、怨讟忤逆して、父も亦た誣を被る者、世に豈に無からんや。淫狎の性を恣にして恩は綠絲に重く、城社の威を挾みて侮は黃裡に及ぶ。『谷風』『栢舟』、妻も亦た所を失ふ者、世に豈に無からんや。惟だ子孝にして夫端ならば、然る後に繼母嫡妻は姻族に辭無し。官に居る者知らざる可からず。
現代語訳
継母の虐待、正妻の嫉妬は、昔から今まで恨みとされてきたことです。ところが先妻の子の不孝や、夫の不品行は、そのまま問われません。世間の情の偏りは久しいものです。実の母でない跡を思い、似た事があると嫌疑を生じ、父を頼む名を借りて根拠なく謗りを作り、恨みごとを言って逆らい、父までが濡れ衣を着せられる者が、世に無いでしょうか。みだらな性をほしいままにして情は側女に重く、権勢をかさに着て侮りは正妻に及ぶ。谷風や柏舟の詩のように、妻が居場所を失う者が、世に無いでしょうか。ただ子が孝で夫が正しくあってはじめて、継母や正妻は親族に対して言い訳する必要がなくなります。官にある者は知っておかねばなりません。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』内篇・倫理・家人の害は卑幼の情を恣にするより大なし家人の害は、卑幼各〻其の無厭の情を恣にして、上の人其の意に阿りて之を禁ぜざるより大なるは莫し。猶ほ婢子言を造りて婦人之を悅び、婦人附會して丈夫之を信ずるより大なるは莫し。此の二害を禁じて家和睦せざる者は鮮し。
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