呻吟語 / 内篇・應務・門に入りて諱を問ふ
在邪人前發正論,不問有心無心,此是不磨之恨。見貪者談廉道,已不堪聞;又說某官如何廉,益難堪;又說某官貪,愈益難堪;況又勸汝當廉,況又責汝如何貪,彼何以當之?或曰:「當如何?」曰:「位在,則進退在我,行法可也。位不在,而情意相關,密諷可也。若與我無干涉,則鉗口而已。」禮入門而問諱,此亦當諱者。
新字:在邪人前発正論,不問有心無心,此是不磨之恨。見貪者談廉道,已不堪聞;又説某官如何廉,益難堪;又説某官貪,愈益難堪;況又勧汝当廉,況又責汝如何貪,彼何以当之?或曰:「当如何?」曰:「位在,則進退在我,行法可也。位不在,而情意相関,密諷可也。若与我無干渉,則鉗口而已。」礼入門而問諱,此亦当諱者。
書き下し
邪人の前に正論を發するは、有心無心を問はず、此れは是れ不磨の恨なり。貪者を見て廉道を談ずるは、已に聞くに堪へず。又た某官如何に廉なるを說けば、益ます堪へ難し。又た某官貪なりと說けば、愈いよ益ます堪へ難し。況んや又た汝當に廉なるべしと勸め、況んや又た汝如何ぞ貪なると責むれば、彼何を以て之に當たらん。或るひと曰く、「當に如何にすべき」と。曰く、「位在らば、則ち進退我に在り、法を行ひて可なり。位在らずして情意相關せば、密諷して可なり。若し我と干涉無くんば、則ち口を鉗づるのみ」と。禮に門に入りて諱を問ふ。此れも亦た當に諱むべき者なり。
現代語訳
邪な人の前で正論を述べるのは、意図があろうとなかろうと、消えない恨みになります。貪る者に廉潔の道を語るのは、すでに聞くに堪えません。さらに、あの役人はこんなに廉潔だと言えばいっそう堪えがたく、あの役人は貪ると言えばもっと堪えがたい。まして、あなたも廉潔であるべきだと勧め、どうして貪るのかと責めれば、相手はどう受け止められるでしょうか。ある人が問いました。ではどうすればよいのですか。答えて言う。自分に位があるなら進退はこちらにあるので、法を行えばよい。位が無くても情のつながりがあるなら、そっと諷すればよい。自分に関わりが無いなら、口を閉ざすだけです。
解説
貪る相手に廉潔を説く場面を、四段階に分けて描きます。一般論、他人の美談、他人の悪評、そして直接の説諭。後になるほど相手は追い詰められます。そして対処が三つに分かれます。位があれば法、情があれば諷諫、関わりが無ければ沈黙。門に入れば忌み言葉を問うという礼の一句で締める形です。門に入れば忌み言葉を問うという、礼の一句で締めています。
この章句が説くこと
正論相手諷諫沈黙立場
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