呻吟語 / 内篇・修身・甘毒は避け難し
苦毒易避,甘毒難避。晉人之壁馬,齊人之女樂,越人之子女玉帛,其毒甚矣,而愚者如飴,即知之亦不復顧也。由是推之,人皆有甘毒,不必自外饋,而眈眈求之者且眾焉。豈獨虞人、魯人、吳人愚哉?知味者可以懼矣。
新字:苦毒易避,甘毒難避。晋人之壁馬,斉人之女楽,越人之子女玉帛,其毒甚矣,而愚者如飴,即知之亦不復顧也。由是推之,人皆有甘毒,不必自外饋,而眈眈求之者且衆焉。豈独虞人、魯人、呉人愚哉?知味者可以懼矣。
書き下し
苦毒は避け易く、甘毒は避け難し。晉人の壁馬、齊人の女樂、越人の子女玉帛は、其の毒甚だし。而るに愚者は飴の如くし、即ち之を知るも亦た復た顧みざるなり。是に由りて之を推せば、人皆な甘毒有り。必ずしも外より饋らずして、眈眈として之を求むる者且つ眾し。豈に獨り虞人・魯人・吳人のみ愚ならんや。味を知る者は以て懼る可し。
現代語訳
苦い毒は避けやすく、甘い毒は避けにくいものです。晋の人が贈った璧と馬、斉の人が贈った女楽、越の人が贈った女と玉と絹。その毒はきわめて強い。それなのに愚かな者は飴のように受け取り、たとえ毒と知っても顧みません。ここから推せば、人にはみな甘い毒があります。外から贈られなくても、じっと求めている者のほうが多いのです。どうして虞や魯や呉の人だけが愚かだったでしょうか。味を知る者は、恐れるべきです。
解説
歴史上、贈り物によって国を滅ぼした三つの例を並べます。璧と馬、女楽、女と財宝。どれも贈られた側が喜んで受け取り、そして滅びました。そこから話は読者に向かい、外から贈られなくても自分から求めている甘い毒があると言います。三国の人を愚かと笑えないという結びで、他人事にする逃げ道を塞いだ一段です。他人事にする逃げ道を、最後に塞いでいます。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
贈収賄甘い毒誘惑歴史自省
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