呻吟語 / 内篇・談道・費を省と為すを知る者は善く省む
知費之為省,善省者也,而以省為省者愚,其費必倍。知勞之為逸者,善逸者也,而以逸為逸者昏,其勞必多。知苦之為樂者,善樂者也,而以樂為樂者癡,一苦不返。知通之為塞者,善塞者也,而以塞為塞者拙,一通必竭。
新字:知費之為省,善省者也,而以省為省者愚,其費必倍。知労之為逸者,善逸者也,而以逸為逸者昏,其労必多。知苦之為楽者,善楽者也,而以楽為楽者痴,一苦不返。知通之為塞者,善塞者也,而以塞為塞者拙,一通必竭。
書き下し
費を省と為すを知る者は、善く省む者なり。而れども省を以て省と為す者は愚なり、其の費は必ず倍す。勞を逸と為すを知る者は、善く逸する者なり。而れども逸を以て逸と為す者は昏し、其の勞は必ず多し。苦を樂と為すを知る者は、善く樂しむ者なり。而れども樂を以て樂と為す者は癡なり、一たび苦しめば返らず。通を塞と為すを知る者は、善く塞ぐ者なり。而れども塞を以て塞と為す者は拙なり、一たび通ずれば必ず竭く。
現代語訳
使うことが節約になると知る者は、上手に節約する者です。節約を節約としてする者は愚かで、その出費は必ず倍になります。苦労することが楽になると知る者は、上手に楽をする者です。楽を楽としてする者は暗く、その苦労は必ず増えます。苦しむことが楽しみになると知る者は、上手に楽しむ者です。楽を楽としてする者は愚かで、ひとたび苦しめば戻れません。通すことが塞ぐことになると知る者は、上手に塞ぐ者です。塞ぐことを塞ぐこととしてする者は拙く、ひとたび通れば必ず尽きます。
解説
目先の節約が後の出費を倍にし、目先の楽が後の苦労を増やす。同じ構造を四通りに言い換えた一段です。今使うことが後の節約になるという逆転の勘定ができるかどうかが分かれ目になります。保守に手を抜いて後で大修理になる話を思えば、そのまま現代の話です。短期と長期を同じ帳簿で見る目が問われます。目先の得は、たいてい後の損になって返ってきます。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
節約長期苦楽逆説勘定
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