呻吟語 / 外篇・治道・罪は軍に在らざるなり
陝西兵以冬操太早,行法太嚴,再三請寬,不從,謀殺撫按總兵不成。論者曰:「兵驕卒悍如此,奈何?」余曰:「不然,工不信度而亂常規,恩不下究而犯眾怒,罪不在軍也。上人者,體其必至之情,寬其不能之罪,省其煩苛之法,養以忠義之教,明約束,信號令,我不負彼而彼奸,吾令即殺之,彼有愧懼而已。
新字:陝西兵以冬操太早,行法太厳,再三請寛,不従,謀殺撫按総兵不成。論者曰:「兵驕卒悍如此,奈何?」余曰:「不然,工不信度而乱常規,恩不下究而犯眾怒,罪不在軍也。上人者,体其必至之情,寛其不能之罪,省其煩苛之法,養以忠義之教,明約束,信号令,我不負彼而彼奸,吾令即殺之,彼有愧懼而已。
書き下し
陝西の兵、冬操太だ早く、法を行ふこと太だ嚴なるを以て、再三寬を請ふも、從はず。撫按總兵を殺さんと謀るも成らず。論者曰く、「兵驕り卒悍なること此の如し、奈何せん」と。余曰く、「然らず。工度を信ぜずして常規を亂し、恩下に究まらずして眾怒を犯す。罪は軍に在らざるなり。人に上たる者は、其の必至の情を體し、其の能はざるの罪を寬くし、其の煩苛の法を省き、養ふに忠義の教へを以てし、約束を明らかにし、號令を信にす。我彼に負かずして彼奸ならば、吾が令即ち之を殺すも、彼愧懼有るのみ」と。
現代語訳
陝西の兵が、冬の訓練が早すぎ法の執行が厳しすぎることで、再三ゆるめるよう請いましたが、聞き入れられませんでした。巡撫と総兵を殺そうと謀りましたが成りませんでした。論じる者が言いました。兵が驕り卒が荒いことがこの通りだ、どうするか。私は言う。そうではない。職人が寸法を信じずに常の決まりを乱し、恵みが下に届かずに人々の怒りを犯した。罪は軍にはありません。人の上に立つ者は、必ずそうなる情を我が身に置き、できないことの罪を寛くし、煩わしく苛酷な法を省き、忠義の教えで養い、約束を明らかにし、号令を信じさせる。こちらが背かないのに相手が奸なら、命令で殺しても、相手には恥じと畏れがあるだけです。
解説
兵が驕っているという見方を、正面から否定します。原因は常規を乱したことと、恵みが届かないまま怒りを犯したこと。どちらも上の側です。そして処方が五つ挙げられます。情を体し、できない罪を寛くし、煩わしい法を省き、忠義で養い、約束と号令を信じさせる。そのうえでなお背く者は殺してよい。順序が逆でないことが要点で、条件を整えるのが先だとされます。
この章句が説くこと
兵変原因上の責任常規順序
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