呻吟語 / 内篇・應務・人の唯唯たるを謂ふ無かれ
無謂人唯唯,遂以為是我也;無謂人默默,遂以為服我也,無謂人煦煦,遂以為愛我也;無謂人卑卑,遂以為恭我也。
新字:無謂人唯唯,遂以為是我也;無謂人黙黙,遂以為服我也,無謂人煦煦,遂以為愛我也;無謂人卑卑,遂以為恭我也。
書き下し
人の唯唯たるを謂ふ無かれ、遂に以て我を是とすと為すこと。人の默默たるを謂ふ無かれ、遂に以て我に服すと為すこと。人の煦煦たるを謂ふ無かれ、遂に以て我を愛すと為すこと。人の卑卑たるを謂ふ無かれ、遂に以て我を恭すと為すこと。
現代語訳
人がはいはいと答えるのを見て、自分を正しいとしていると思ってはいけません。人が黙っているのを見て、自分に服していると思ってはいけません。人が温かく接するのを見て、自分を愛していると思ってはいけません。人がへりくだるのを見て、自分を敬っていると思ってはいけません。
解説
相手の四つの態度を挙げ、そのどれも額面通りに受け取るなと言います。返事、沈黙、温かさ、へりくだり。どれも上に立つ者が心地よく感じるものばかりで、それゆえ誤解しやすい。同じ形の否定を四度重ねることで、自分が周囲をどう読んでいるかを点検させます。地位が上がるほど効いてくる一段です。地位が上がるほど、効いてくる一段になっています。
この章句が説くこと
誤解態度追従沈黙地位
関連する章句
-
『宋名臣言行録』前集巻一・曹彬王始めて生まれて周歳の日、父母百玩の具を以て席に羅ね、其の取る所を觀る。王左手に干戈を提げ、右手に俎豆を取る。須臾にして一印を取り、餘は視る所無し。後果たして樞宻使相と為り、卒して濟陽王を贈られ、帝廟に配享せらる。公、將相を兼領すと雖も、爵禄を以て自ら大とせず。門に造る者は皆な廡に降りて揖す。下吏を名呼せず。吏の禀白する者は、劇暑と雖も冠せずんば見えず。江南・西蜀の二國を伐ち、諸將皆な捆載して歸る。惟だ公のみ但だ圖史衾簟のみ。
-
『呻吟語』内篇・應務・仇人の辭色と恩人の狀態禍は人を仇とせずして仇人の辭色有るより大なるは莫し。恥は人に恩あらずして恩人の狀態を詐るより大なるは莫し。
-
『呻吟語』内篇・修身・辭色は卻って是れ我の的なり余は小人を待つに辭色を假す能はず。小人或いは堪ふる能はず。年友王道源之を危ぶみて曰く、「今世官に居るには切に宜しく此を戒むべし。法度は是れ朝廷の的なり、財貨は是れ百姓の的なり、真に人情を借り得ず。辭色に至りては、卻って是れ我の的なり。些兒を假借するも何ぞ害あらん」と。余深く之に感じ、因りて識して改めたり。
-
『呻吟語』内篇・修身・世に十態有り世に十態有り、君子は焉を免る。武人の態(粗豪)無く、婦人の態(柔懦)無く、兒女の態(嬌稚)無く、市井の態(貪鄙)無く、俗子の態(庸陋)無く、蕩子の態(儇佻)無く、伶優の態(滑稽)無く、閭閻の態(村野)無く、堂下人の態(局迫)無く、婢子の態(卑諂)無く、偵諜の態(詭暗)無く、商賈の態(衒售)無し。
-
『呻吟語』内篇・應務・養態は士大夫の陋習態を養ふは、士大夫の陋習なり。古の君子は德を養ふ。德成りて外に見はるる者に德容有り。怒る可きを見れば、則ち剛正の德容有り。行ふ可きを見れば、則ち果毅の德容有り。
-
『呻吟語』内篇・修身・之を忘言に付するに若かず之を忘言に付するに若かず。久しければ則ち明らかなり。明らかなるを得ざれば、自ら天の在る有るのみ。