呻吟語 / 外篇・世運・目空空として氣勃勃たり
世之衰也,卑幼賤微氣高志肆而無上,子弟不知有父母,婦不知有舅姑,後進不知有先達,士民不知有官師,郎署不知有公卿,偏稗軍士不知有主帥。目空空而氣勃勃,恥於分義而敢於陵駕。嗚呼!世道至此,未有不亂不亡者也。
新字:世之衰也,卑幼賤微気高志肆而無上,子弟不知有父母,婦不知有舅姑,後進不知有先達,士民不知有官師,郎署不知有公卿,偏稗軍士不知有主帥。目空空而気勃勃,恥於分義而敢於陵駕。嗚呼!世道至此,未有不乱不亡者也。
書き下し
世の衰ふるや、卑幼賤微氣高く志肆にして上無し。子弟は父母有るを知らず、婦は舅姑有るを知らず、後進は先達有るを知らず、士民は官師有るを知らず、郎署は公卿有るを知らず、偏稗軍士は主帥有るを知らず。目空空として氣勃勃たり。分義を恥ぢて陵駕を敢へてす。嗚呼、世道此に至れば、未だ亂れず亡びざる者有らざるなり。
現代語訳
世が衰えるときは、身分の低い者や年少の者が気を高ぶらせ志をほしいままにして、上を認めません。子弟は父母がいることを知らず、嫁は舅姑がいることを知らず、後進は先輩がいることを知らず、士も民も役人や師がいることを知らず、下役は公卿がいることを知らず、副将や兵は主帥がいることを知りません。目は虚ろで気だけが盛んです。分と義を恥じて、乗り越えることを平気でします。ああ、世の道がここまで来れば、乱れず滅びなかった例はありません。
解説
衰える世の様子を、六つの場面で描きます。家、嫁、学問、官、軍。どこでも下が上を認めなくなる。そして分と義を守ることを恥じ、乗り越えることを誇るという価値の逆転が示されます。当時の秩序観が強く出た一段ですが、目は虚ろで気だけが盛んという一句には、今にも通じる観察があります。目は虚ろで気だけが盛んという一句に、今にも通じる観察があります。
この章句が説くこと
衰世下克上秩序分義価値
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