呻吟語 / 外篇・詞章・猶ほ文章を以て之を崇尚す
而無識者猶以文章崇尚之,哀哉!
書き下し
而るに識無き者は猶ほ文章を以て之を崇尚す。哀しいかな。
現代語訳
それなのに識見の無い者は、なお文章としてこれを尊びます。悲しいことです。
解説
前の段を受けて、一句で締めます。道を砕いた文章が、文章として尊ばれている。評価する側にも識見が無いからです。害が広がる仕組みが、作る側と評価する側の両方で示された形になっています。短いぶん、嘆きだけが残る終わり方で、前に出てきた、こじつけが賢さの装いと結びつくという段とも通じます。作る側と評価する側の両方に、害の源があります。短いぶん、嘆きだけが残る終わり方です。
この章句が説くこと
無識崇尚評価する側広がり嘆き
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・聖賢・哀しむ可きのみ哀しむ可きのみ。
-
『呻吟語』外篇・品藻・吁、言ひ難きかな吁、言ひ難きかな。
-
『呻吟語』外篇・詞章・文章の妖にして道の賊艱語深辭、險句怪字は、文章の妖にして道の賊なり。後學の殃にして木の災ひなり。路は本と平らかなるに、山溪之にす。日月は本と明らかなるに、雲霧之にす。異理無くして、異言有り。深情無くして、深語有り。是の人誡められずして、是の書焚かれざるは、世教の責有る者の罪なり。若し其の人は學博くして識深く、意奧にして語奇なりと曰はば、然らば則ち孔・孟の言は淺鄙甚だし。
-
『呻吟語』外篇・品藻・歎ず可きのみ歎ず可きのみ。
-
『呻吟語』外篇・詞章・文に因りて道を見る古人に無益の文章無し。其の道を明らかにするや形して言と為らざるを得ず。其の言を發するや成して文と為らざるを得ず。所謂文に因りて道を見る者なり。其の文の古今工拙は論ずる無し。
-
『呻吟語』外篇・詞章・詩辭は哭笑の如くならんことを要す詩辭は哭笑の如くならんことを要す。情の已むを容れざるに發せば、則ち真切にして味有り。果たして真ならば、工拙を較ぶるを必ずしもせず。後世は只だ詩辭を學ばんと要す。然れども工にして真を失はば、詩辭の本意に非ざるなり。